「もう根性論では守れない」――物流トラック事故「46.7%」減の裏で進む、ドライバー状態の可視化とは?

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事業用トラックの死傷事故は10年で46.7%減少した一方、2024年も死者は2663人に上る。衝突回避技術だけでは埋めきれない領域として、ドライバーの健康状態を数値で捉え、事故を未然に防ぐ取り組みが広がり始めている。

事業用トラック事故と被害拡大の構図

トラック(画像:写真AC)
トラック(画像:写真AC)

 事業用トラックは車両の重量が大きく、停止するまでに距離を要するため、重大な事故が起きた場合には被害が広がりやすい傾向がある。その影響は賠償負担の増加や社会的な信頼の低下にとどまらず、企業の継続にも関わる問題となる。

 全日本トラック協会が公表した資料「事業用貨物自動車の交通事故の発生状況」によれば、2024年の全国の交通事故件数(物損事故を除く)は29万792件、死者数は2663人、負傷者数は34万3756人であった。

 前年と比べると、事故件数は1万7138件減(-5.6%)、死者数は15人減(-0.6%)、負傷者数は2万1839人減(-5.6%)となっている。事業用貨物自動車の死傷事故についても、2022年の9371件、2023年の9181件、2024年の8619件と減少が続いており、2015(平成27)年の1万6156件と比べると、10年間で

「7537件(46.7%)減少」

している。こうした改善の背景には、衝突被害軽減ブレーキをはじめとする安全技術の普及がある。一方で、こうした仕組みだけでは対応が難しい場面も残されている。2024年には、群馬県内の国道で対向車線にはみ出し3人が死亡した事故や、埼玉県内の首都高速道路で渋滞の最後尾に追突し3人が死亡した事故が発生した。

 いずれも、車両の性能向上だけでは防ぎきれない領域があることを示している。物流の現場では重大事故が企業の活動に直結するため、減少傾向を前提にするのではなく、事故につながるドライバーの状態に目を向けた取り組みが求められているのだ。

体調変化に起因する事故の増加

事故類型別死傷事故件数の推移(平成27-2024年)(画像:全日本トラック協会)
事故類型別死傷事故件数の推移(平成27-2024年)(画像:全日本トラック協会)

 交通事故の理由はひとつに限られないが、近ごろはドライバーの体調の変化が引き金となる事例が目立ってきている。こうした状況を受け、enstem(東京都中央区)は、ドライバーの安全と健康を同時に支える管理プラットフォーム「Nobi for Driver」を開発した。2025年12月には、ヤマトマルチチャーター(京都府京都市)がこのシステムを本格的に導入する予定である。

 大手事業者が導入を決めたことは、安全管理のやり方が、従来の点呼時における対面での確認から、リアルタイムで体の状態を把握する仕組みへと移りつつあることを示している。

 事故の発生を未然に抑え、働く環境の改善にもつなげる狙いがあるが、この仕組みが現場でどの程度機能し、事故の抑制にどこまで寄与するのかについては、今後の実運用を通じて見極めていく段階にある。

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