「もう根性論では守れない」――物流トラック事故「46.7%」減の裏で進む、ドライバー状態の可視化とは?

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事業用トラックの死傷事故は10年で46.7%減少した一方、2024年も死者は2663人に上る。衝突回避技術だけでは埋めきれない領域として、ドライバーの健康状態を数値で捉え、事故を未然に防ぐ取り組みが広がり始めている。

労働環境と健康管理の課題

健康起因や居眠り運転による事故リスクを軽減するサービス「Nobi for Driver」(画像:enstem)
健康起因や居眠り運転による事故リスクを軽減するサービス「Nobi for Driver」(画像:enstem)

 物流の現場では、高齢化への対応や労働時間の上限規制への適応に加え、疲れやストレスにともなう心身の負担を抑える取り組みが求められている。enstemが提供する仕組みは、身につける端末から得られるデータをもとに、個人や運行ルート、事業所ごとのリスクを可視化し、点呼や休憩、教育、勤務の組み立てに反映させるものだ。enstemとヤマトマルチチャーターは、2025年7月から行った試験運用を通じて、いくつかの成果を確認している。

 積み下ろし作業では、特定の場所や時間帯において熱中症の危険が高まる傾向が見られ、作業の配置や休憩の取り方、作業の順序を見直すための手がかりが得られた。深夜の作業においても、本人の自覚と重なるタイミングで通知が出ることで、自覚しにくい負担のたまり具合をその場で把握でき、配置判断に裏付けが加わった。長距離走行中については、疲れの兆しが通知として現れた場面で休憩を取ると、心拍数などの指標が元の状態に戻ることが確認されている。

 こうした結果は、数値を手がかりに状況を捉えることで、これまで経験に頼る部分が多かった安全管理が一段と確かさを増す可能性を示している。休憩の効果が数値として示されることは、ドライバーにとって休む判断の後押しになり、同時に作業環境の改善を荷主に働きかける際の根拠にもなる。身につける端末から得られるデータの活用は、現場の安全を支えるだけでなく、無理のない働き方を支える土台として位置づけられつつあるのだ。

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