「8回以上の督促」さえ拒否―― 電動キックボードで全国初の書類送検、“免許不要制度”の構造的欠陥とは
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都市で急増する電動キックボードの多くは、免許不要の「特定小型原動機付自転車」。制度開始から約2年、警視庁は講習命令を拒否した男性を全国初めて書類送検した。事故は2025年に280件、9割に違反が絡む。利便性を優先した新モビリティは、統治コストという新たな課題を突きつけている。
講習拒否の実態

特定小型原動機付自転車には、危険な運転を繰り返した利用者に対して講習を義務づける仕組みがある。信号無視や通行区分違反、妨害運転など17種類の危険行為が対象となっており、これらを3年以内に2回以上繰り返すと講習を受けなければならない。
この仕組みは罰を与えることよりも、教育を通じて交通の秩序を保とうとする考え方に基づいている。だが今回の書類送検された事例は、この仕組みが想定していなかった事態を浮き彫りにした。
書類送検された29歳の男性は、2024年10月に信号無視や歩道走行で取り締まりを受けた後、2025年7月に東京都公安委員会から講習を受けるよう命じられた。警視庁は電話を5回、はがきを2回送るなど、合計で8回以上にわたって受講を促したが、男性は受講期限の10月までに応じなかった(『テレビ朝日』2026年3月4日付け)。
男性は任意の調べに対し、取り締まりの内容に納得していないから受講しなかったと話している。2025年、警視庁管内では2563人が講習を受けた実績があるが、本人の意思に関係なく強制的に従わせる力がこの仕組みには不足している。
行政が多大な労力をかけても、本人が納得しなければ指導が行き届かないという実態が明らかになった。電話やはがきによる繰り返しの督促は、それ自体が行政側の大きな負担となっている。
教育を重視する現在のやり方は、利用者の善意に頼りすぎており、意図的に従わない者に対しては効力を発揮できない。利用者が自分の判断で受講を拒み続ければ、安全を確保するための枠組みは機能しなくなるだろう。