AIが「自動車」を支配する日――ネット接続不要で動く次世代自動車、その衝撃の正体とは
車が現場で考える時代

昨今、フィジカルAIという言葉が業界の枠を超えて浸透し始めている。これは米国シリコンバレーに本社を構える半導体メーカーNVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が、2024年から提唱し続けている概念だ。同社はこの技術について、自発的に前進し推論や計画を立てて行動できるAI(physical AI, AI that can proceed, reason, plan and act.)と定義している。現実の物理環境における試行錯誤を通じて強化学習を繰り返し、自律的に判断して動くシステムの実現を目指している。
AI需要の急増にともない、多くの企業がインフラ投資を強化しており、半導体市場は急成長を遂げた。この流れを受け、同社は2026年1月の展示会「CES 2026」で最新の成果を発表した。
中心となったのは、データセンター向けAIスーパーコンピューターのVera Rubin(ヴェラ・ルービン)だ。内部には強力な演算性能を持つGPUやCPUのほか、通信を高速化するネットワーク部品などが組み込まれている。特にGPUは最大50ペタフロップス(1秒間に50×10の15乗)の演算性能を有し、1トークンあたりの推論コストを従来の10分の1にまで低減した。2026年後半からMicrosoftやCoreWeaveなどを通じて供給が始まる見通しだ。
併せて、自律走行車開発向けの包括的な技術スタックとしてAlpamayo(アルパマヨ)も公開された。ここにはフィジカルAIによる1700時間以上の走行データや、仮想環境でのシミュレーター、100億の学習パラメーターを用いて視覚・言語・行動を人間のように推論し説明できるVLAモデルが含まれている。これらはすべてオープンソース化されており、GitHubから入手できる。開発者はこれを取り入れることで、多額の投資をせずとも高度な知能を自律走行車へ取り込むことができ、開発期間と費用の大幅な抑制が見込める。
この動向は、これまでクラウドが脳の役割を担い車両が末端として動く力学を覆し、車両自体が独立した知能を持つ形へと移行させる。これまで高度なソフトウェア開発が困難だった中堅メーカーであっても、最新の知能を車両へ取り込める可能性が広がった。半導体とソフトウェア、自動車が密接に結びつくなかで、産業の進化は加速していくはずだ。