AIが「自動車」を支配する日――ネット接続不要で動く次世代自動車、その衝撃の正体とは

キーワード :
,
NVIDIAが提唱する「フィジカルAI」が自動運転を変える。VLAモデル搭載で推論ミス37%減、車内で完結する知能により、2030年には世界で1800万台が自律走行車に。安全と投資効率の両立が産業の鍵となる。

クラウド依存の限界

 AIは日々進化を続けており、多岐にわたる分野で依存が強まっている。ただ、不得手なことも多く、性能を拡張していく必要がある。特に、視覚や言語の情報を扱うモデルは、時間の経過や空間の把握を苦手としている。

 例として、現在時刻を質問しても不正確な回答を出す問題がある。これはAIが時刻を確認するために、物体や場所との相対的な角度や現在位置、時計の画像といった空間認識を必要とするからだ。特に奥行きについては、これまでの画像とテキストの学習データに奥行きの概念が含まれていないことが多く、動的な物体同士の距離を十分に学習できていない。また、これまでのAIの学習や推論は、

「外部のクラウド環境」

を前提としてきた。大きなサーバーやクラウドプラットフォームに保存したデータをインターネット経由で利用する仕組みが主流であった。ただ、データセンターが多量の計算によって熱を持ったり、電力供給が途絶えたりしてサーバーが停止する可能性も考えられる。外部に判断を委ねるシステムは、遅延やネットワーク障害の影響を真っ先に受け、通信中に情報が漏洩するリスクも高い。

 高速で移動する車両において、通信の遅延は衝突などの重大な事故に直結し、その際の責任所在を曖昧にする懸念がある。コンマ数秒の判断の遅れが物理的な破壊を招く現場では、この不確実性が量産を進める上での大きな障壁となっている。外部の基盤に依存し続けることは、特定の企業に車両の主導権を握られることを意味し、メーカー独自の価値を損なう恐れもある。

 こうした不確定要素が普及を阻んでいるため、NVIDIAはフィジカルAIの領域へ踏み込む決断をしたのである。

全てのコメントを見る