「嫌がらせが怖くて言えない」 中小運送業者に輸送事故を押し付ける“無慈悲な商慣習”――1000万弁済でも現物没収、荷主選別の必然とは
物流現場で起きる責任の押し付け合い

「やりきれないですよ……」
ある運送会社(A社)の役員は、そういって言葉を落とした。役員が筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)に見せたのは、有名ビールの輸送中に発生したという貨物破損事故の写真だった。缶ビールを詰めた外装箱がパレットにまとめられ、2段に積み上げられている。上段のパレットは傾き、下段の上から2層目の箱が押しつぶされている。中身のビールは漏れ、外装箱にまで染み出している様子がはっきり確認できる。
「ビールメーカーの物流センターからは、「お前のところのトラックドライバーが誤ってフォークリフトの爪を外装箱に刺し、外装箱を突き破って缶ビールが破損したんだ」といわれましたが」
役員はそう振り返る。だが写真を見る限り、フォークリフトの爪が突き刺さった痕跡は見当たらない。むしろ上下から強い圧力がかかり、全体が押しつぶされたような状態に見える。
「缶飲料は上下方向の力には強いんですよ。でも、左右に細かい振動が加わると、破裂することがあります。これはおそらく、パレットを2段積みした状態でフォークリフトで輸送し、そのときの揺れで缶が破裂したのだと考えられます」
役員はそう分析する。本来、缶ビールを積んだパレットを2段積みのままフォークリフトで荷役する行為は、破損防止の観点から禁止されている。ドライバー本人も、そのような作業はしていないと否定している。さらに不可解なのは、写真の撮影時刻だ。
「それに、この写真は、うちのドライバーが荷卸しをしてから2時間も経って撮影されたものらしいです。もし2時間も経過していたのであれば、漏れたビールは下に積まれた外装箱まで染み出しているはずです」
そう説明する。状況を総合すれば、荷卸し先の物流センター側で、フォークリフトのオペレーターがルールを無視して2段積みのまま貨物を移動させた可能性が高い。
「お客さまの作業員が起こしたミスを、うちに押し付けようとしていることは明白なんですよ。でも、これを指摘したら、どんな嫌がらせをされるかわからないし、取引だって切られるかもしれない。うちのような中小企業の立場では、泣き寝入りするしかありません」
役員はそういって、再び小さく息をついた――。