「嫌がらせが怖くて言えない」 中小運送業者に輸送事故を押し付ける“無慈悲な商慣習”――1000万弁済でも現物没収、荷主選別の必然とは
「運送会社に選ばれる荷主にならなければならない」――そんな声が聞かれるようになってきた。だが実現には、現場に根強く残る運送会社への差別的な意識を改めることが前提となる。まずは、飲料業界にいまだ残る構造的な問題を例に考えてみたい。
CLOに課される経営横断の責任

2026年4月1日に施行される「物資の流通の効率化に関する法律」(物効法)では、一定量以上の貨物を扱う特定荷主に対し、物流効率化への取り組みが義務づけられる。その柱のひとつが、CLOの選任である。
法令上、CLOは物流効率化の責任者と位置づけられている。ただ、その役割を
「運送会社に選ばれる荷主になるための責任者」
と広く捉えれば、本稿で取り上げてきたような現場の課題は無視できないテーマになる。
まず問われるのは、CLOとその組織が、A社の事例に見られたような現場のルール逸脱や誤った慣行を把握できるかどうかである。現場で起きている問題が経営レベルに届かなければ、改善は進まない。
さらに、社内には別の力学もある。短納期を当然のように物流部門へ求める営業部門や、対外的な環境配慮を優先し、輸送に耐えにくい外装箱を容認してきた環境部門や製品開発部門など、
「物流は販売や会社方針に従うものだ」
と考える勢力と、CLOは向き合わなければならない。
最近は「運賃を上げればそれで十分」と考える荷主も見受けられるが、それは誤解だ。適正運賃の支払いは前提条件にすぎない。それだけでは、運送会社から選ばれる存在にはなれない。
本来求められるのは、全従業員が「物流効率化なくして経営は成り立たない」という認識を共有することだ。そのうえで、
「どうすれば物流を効率化できるか」
「自部門の都合が物流の足かせになっていないか」
と自問し続ける組織に変えていく必要がある。そうした意識改革まで担うのが、CLOの本来の役割である。