「嫌がらせが怖くて言えない」 中小運送業者に輸送事故を押し付ける“無慈悲な商慣習”――1000万弁済でも現物没収、荷主選別の必然とは
「運送会社に選ばれる荷主にならなければならない」――そんな声が聞かれるようになってきた。だが実現には、現場に根強く残る運送会社への差別的な意識を改めることが前提となる。まずは、飲料業界にいまだ残る構造的な問題を例に考えてみたい。
事故対応を定めた業界ガイドライン

飲料輸送における事故対応については、すでに一定のルールが示されている。
・国税庁
・農林水産省
・経済産業省
・中小企業庁
・国土交通省
・公正取引委員会
に加え、運送会社や飲料メーカーが参加した飲料配送研究会が、2019年7月に「飲料配送研究会報告書」を公表し、対応の指針を整理した。そこでは、
・損害賠償(運送会社による弁済)の対象は、実際に破損している製品のみ
・運送会社が(未破損の製品を含めた)貨物全額賠償した場合、その所有権は運送会社が得る
・現物を飲料メーカーが引き取る場合には、「メーカーが相当程度に減額された金額で買い戻す」といった方法を契約で明文化する
こうした原則がガイドラインとして定められている。つまり、過度な一括弁済や現物の無償回収を防ぐための枠組みは、すでに用意されているということだ。
それにもかかわらず、現場ではこれらが十分に守られていない。実態を見る限り、飲料メーカー側に
「物流を経営課題として捉える意識が根付いていない」
といわざるを得ない。