「中国嫌い」が日本を孤立させる――86%嫌悪の背後で、世界は「EVの実利」優先? 感情論に固執する日本が市場を覆い隠す
世界で中国製EVと関連技術の存在感が急速に高まる一方、日本の世論は大きな温度差を抱えたままだ。25か国調査や86%という対中不信の数字を手がかりに、移動産業を巡る国際評価の変化と、日本が直面する市場リスクを読み解く。
地政学が塗り替える産業地図の行方

地政学リスクは、外交や安全保障の話題に収まるものではない。実際には、産業の広がり方そのものに影響を及ぼし、どの国の製品や仕組みが標準として根付くかを左右している。
中国からの投資を受け入れる中所得国が増え続ければ、そうした地域で中国製の移動手段が次世代インフラの前提として使われる可能性は高まる。一方で、米国ブランドに対する好感度が落ちている地域では、これまで積み上げられてきた評価が揺らぎ、実用性と先端性を前面に出す新興勢力に目が向きやすくなる。
投資や支援といった経済的な見返りと、政治的な立場を比べたとき、ある陣営の製品が選ばれる市場が生まれる展開は、すでに想像の域を超えつつある。それは企業同士の競争の帰結というより、国際秩序の選択が市場に反映された姿と見るほうが近い。
インフラの規格が広く行き渡ると、影響は車両の販売台数にとどまらない。充電網や通信の方式、決済の仕組みが一つの流れに固定された国では、後から参入する企業が互換性を確保するために負担するコストが重くなり、現実的な参入が難しくなる。
長く使えることや壊れにくさといった、日本が強みとしてきた評価軸は、社会の仕組みとどれだけ噛み合っているかという別の基準に置き換えられつつある。中国は車両を孤立した工業製品としてではなく、都市を動かす一部として海外に持ち出している。その枠組みを受け入れた市場では、他国が入り込む余地はほとんど残らない。
国内で感情的な是非に意識が向いている間にも、世界の各地では将来の収益に直結する市場が特定の規格で固められ、後戻りの利かない段階に進み始めているのだ。