「テスラは高嶺の花になりました」 BYD、補助金対象外でも「前年比5倍」――英国EV市場を席巻した根本理由とは

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英国のEV市場は2025年、前年比24%増の約47万台と急成長を遂げた。しかし、ZEV義務や補助金政策の影響で実需の熱量は必ずしもともなっておらず、中間所得層の購入ハードルは依然として高い。こうした環境下、中国のBYDは価格と性能を両立した実用EVで台頭。政策の理想と生活者の現実の隔たりが浮き彫りになる中、既存メーカーはプレミアム領域に封じ込められ、市場の構造自体が大きく揺らぎつつある。

BYD躍進の背景にある構造

BYDブレードバッテリー(画像:英国BYD)
BYDブレードバッテリー(画像:英国BYD)

 野心的な環境規制と購買力の低下が同時に進むなか、なぜBYDだけが英国市場で急伸したのか――。

 その理由は、原材料から主要部品までを自社でまかなう垂直統合モデルにある。欧州メーカーが地政学的リスクや物流の混乱に直面するなか、BYDは価格の安定性を維持しつつ、既存メーカーが採算を理由に手を引いた大衆向け実用車の市場を確実に押さえた。

 この躍進は一過性の流行では説明できない。安価なリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを軸にした技術構造が、自動車を趣味や嗜好の対象から、生活インフラとして不可欠な存在へと変えたことが大きい。経済性と実用性を重視する英国の消費者は、ブランドの伝統よりも、自らの生活を守る選択を優先した。その支持が、従来の価値観では測れない市場の本質を浮かび上がらせる。

 2029年の総選挙を控え、現実味の乏しいZEV規制が政治的に揺れる状況のなかで、BYDの存在は新興勢力にとどまらず、英国市場の構造そのものを揺さぶる存在になりつつある。

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