「テスラは高嶺の花になりました」 BYD、補助金対象外でも「前年比5倍」――英国EV市場を席巻した根本理由とは

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英国のEV市場は2025年、前年比24%増の約47万台と急成長を遂げた。しかし、ZEV義務や補助金政策の影響で実需の熱量は必ずしもともなっておらず、中間所得層の購入ハードルは依然として高い。こうした環境下、中国のBYDは価格と性能を両立した実用EVで台頭。政策の理想と生活者の現実の隔たりが浮き彫りになる中、既存メーカーはプレミアム領域に封じ込められ、市場の構造自体が大きく揺らぎつつある。

補助金が埋めきれない価格の壁

ロンドン市内の渋滞税対象地区(画像:ロンドン交通局)
ロンドン市内の渋滞税対象地区(画像:ロンドン交通局)

 英国政府が掲げる2025年のZEV比率目標は28%だが、実際の需要はそこから約5ポイント下にとどまっている。数字の差は小さく見えるものの、市場の手応えとしては無視できない隔たりだ。

 政府はこのギャップを埋めるため、2025年7月から新たな購入支援策を導入した。車両価格が3万7000ポンド(約790万円)以下のEVを対象に、最大3750ポンド(約80万円)を補助する制度で、総額は6億5000万ポンド(約1390億円)に上る。対象を欧州、日本、韓国メーカーに限定し、

「中国勢を排除する」

ことで、国内外の既存産業を守る意図も透けて見える。

 ただ、この水準の補助金で価格上昇を吸収できているかといえば心もとない。増税と物価高が家計を直撃するなか、中産階級にとってテスラに代表されるプレミアムEVは、もはや現実的な購入対象から外れつつある。初期費用の高さが、そのまま心理的な壁として残る。

 維持費の面でも状況は厳しさを増している。公共充電料金は上昇基調にあり、2026年初頭からは、これまで免除されてきたロンドン市内の渋滞税がEVにも課される予定だ。さらに2028年には走行距離に応じた課税の導入も見込まれている。EVを安価で有利な移動手段として扱ってきた前提は、静かに崩れ始めている。

 政策を進める側の施策が、ZEV化を後押しするどころか足かせになっている印象は否めない。購入後に負担が増える可能性が見えている以上、消費者は慎重になる。その不安が積み重なり、EV選択へのためらいを一段と強めている。

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