「残クレ」を利用していい人・絶対にダメな人――決定的な分岐点とは何か? 5人に1人が選ぶ「所有しない」買い方の実態

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新車購入者の約5人にひとりが選ぶ残価設定型ローン。ネット上では「見栄購入」「返却リスク」への批判が飛び交うが、実態は負債管理と市場構造を反映した高度なローン仕組みである。

残クレ批判が見落とす市場の現実

自動車(画像:写真AC)
自動車(画像:写真AC)

 残価設定型ローン、いわゆる残クレについて、ネット上を眺めていると興味深い光景が広がっている。冷静な議論よりも、感情的な批判のほうが圧倒的に多い。

「見栄を張る人向けの仕組みだ」
「高級ミニバンと残クレはセットだ」
「返却時に高額請求される」
「手元に何も残らない」
「販売店と信販会社だけが儲かる」

こうした声が、まるで合唱のように繰り返されている。

 その奥にあるのは、利用者の金銭感覚や虚栄心に対する冷ややかな視線だ。

「月々の支払額を安く見せかけているだけで、実際は多額の借金じゃないか」
「身の丈以上の車に乗りたいだけだろう」

そんな空気が漂っている。

 現場寄りの懸念もある。

「返却時のキズや損傷のチェックが想像以上に厳しい」
「事故や盗難が起きたら、面倒な対応を強いられるのは契約者本人だ」

リスク負担の不公平さを指摘する声は根強い。「車は自分の物じゃない。借りているだけだ」という所有権の問題。「アルファードといえば残クレ、というイメージが定着してしまった」という特定車種との結びつき。

「高級車を所有しているんじゃなくて、高額な車を運用しているだけだろう」
「中古車で十分じゃないか」

という、資産保有の合理性を問う反応。

 こうした声の多くには、ある共通点がある。仕組みの是非を検討しているようで、実際にはその本質を見ていない。利用者の属性や印象への批判が先に立ち、負債の持ち方やリスクの所在、業界側の構造といった肝心な点が語られていない。

 話を始める前に、実際の市場で何が起きているのか整理しておきたい。日本の新車市場では、支払い方法が様変わりしてきた。ジョイカルジャパンの調査を見ると、その変化は数字にはっきり表れている。2012(平成24)~2013年には約75%を占めていた現金一括購入は、2021年には56%まで下がった。一方、残クレを含む据置型ローンは、2007年以前は3%程度だったものが、その後じわじわ増え続け、2018年には20%を超えた。今では、新車購入者のおよそ5人にひとりが残クレを選んでいる。限られた人だけの選択肢ではなく、新車販売を支える一般的な仕組みになっている。

 注目すべきは、家計が抱える負債の形が、将来の返却や清算を前提にしたものへと変わってきた、その事実だ。この変化は何を意味しているのか。車両を蓄財のための資産と見なす古い価値観と、技術的な陳腐化が激しい現代の製品特性との間に生じた、構造的なずれを反映している。所有権という古くなった概念に固執する批判は、車両がすでに移動機能を提供する消耗型の端末へと変わった現実を直視できていない。

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