インフラという絶壁 消費者が「EVを選ばなかった」決定的理由【短期連載】「2035年エンジン車禁止」という幻影(4)
- キーワード :
- 自動車, EV, 「2035年エンジン車禁止」という幻影
2023年の欧州「2035年エンジン車禁止」はBEV普及の転換点とされたが、充電インフラ不足や中古バッテリー評価の不透明さ、寒冷地での航続距離低下により販売は伸び悩む。ACEAは2030年までに充電ポイントを年間8倍整備する必要があると指摘する。
中古BEV市場の停滞

BEVが普及し始めたころから問題視されていたのは、
「リセールバリュー(再販価値)の低さ」
である。BEVの価値の約半分はバッテリーに依存するといわれるが、中古BEVのバッテリー状態の不確実性が価値の下落につながっている。多くのメーカーは8年または16万kmの保証を付けているにもかかわらず、中古市場は活性化していない。理由は
・消費者心理
・バッテリー評価の不透明さ
にある。消費者心理には新車向け補助金の存在、保証期間終了後の不安、そして新技術への猜疑心が含まれる。EU各国のBEV補助金は新車のみが対象だ。結果として、保証期間の残りが短い中古車を選ぶより、補助金を使って新車を買う方が合理的だと判断される。
保証終了後の不安も根強い。経年したBEVの知見が不足しているため、新技術への警戒心も消費者には自然な反応である。この問題は、時間による解決を待つしかない。
中古BEVのバッテリー評価も未解決の課題だ。ADACのテストでは、2014年製で5年・10万km走行したBEVのバッテリーは、エネルギー容量の86%を維持していた。メーカーの推奨通りに使用すれば、バッテリーは長持ちする可能性が高い。
しかし、問題はそこにない。
・軽微な事故
・過放電での劣化
を誰も正確に確認できない現状がある。中古BEVのバッテリー認証ルールは以前から求められてきたが、今も整備されていない。EUもメーカーも新車販売には熱心だが、中古市場の整備には関心が薄い。BEVを広く普及させるには、中古バッテリーを正当に評価し、健全な中古市場を形成することが不可欠である。