インフラという絶壁 消費者が「EVを選ばなかった」決定的理由【短期連載】「2035年エンジン車禁止」という幻影(4)
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2023年の欧州「2035年エンジン車禁止」はBEV普及の転換点とされたが、充電インフラ不足や中古バッテリー評価の不透明さ、寒冷地での航続距離低下により販売は伸び悩む。ACEAは2030年までに充電ポイントを年間8倍整備する必要があると指摘する。
「充電難民」の発生とインフラ格差

ここ数年ではっきりしたのは、BEVの普及には
「充電インフラの整備が不可欠」
という点である。自動車メーカーも販売のカギがインフラ整備にあることは理解していた。日本ではトヨタや日産が幹事会社となり、CHAdeMO規格(日本発のEV向け急速充電規格の名称)の充電設備を整備してきた。テスラは自前でスーパーチャージャーを提供し、北米を中心に世界展開した。EUや加盟各国も補助金を投入してインフラ整備に取り組んだが、数は十分ではなかった。
欧州自動車工業会(ACEA)によると、2017年から2023年にかけて設置された充電ポイントの増加は、BEVの台数増加のスピードに追いついていない。これでは
「充電難民」
が発生するのも当然だ。集合住宅が多い欧州の都市部では、個人で充電設備を設置するのは困難であり、都市型インフラ整備がBEV普及のカギとなる。
面での充電インフラ整備も欠かせない。EU各国の100kmあたりの充電ポイント数を見ると、
・デンマーク:95.7か所
・ルクセンブルク:92.5か所
・オランダ:81.4か所
・ドイツ:65.2か所
・フランス:13.6か所
に対し、ブルガリア、リトアニア、ルーマニアは1.2か所、アイスランド1.1か所、ポルトガル0.5か所にとどまる(ドイツ自動車連盟〈ADAC〉)。国による差は大きく、整備が進む国でも地域による偏りがある。
充電インフラに制約がある限り、消費者はBEVを選びにくい。ACEAのレポートでは、EUは2030年までに年間で
「8倍」
の充電ポイント整備が必要とされている。