人材とイノベーションの融合――次世代を担う企業文化と技術者【連載】Make Japanese Cars Great Again(7)
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政府による質の対策

技術者の不足は日本だけの問題ではなく、世界的な課題である。少子化により先進国の若年層の人口は減少している。優秀なデジタル人材は、自動車産業のような保守的な業界より、IT産業や娯楽産業など先進的な分野を好む傾向がある。大企業よりも自由度の高いスタートアップを選ぶ者も多い。このような傾向を踏まえ、人材戦略は質と量の両面で、政府と企業が協力して行う必要がある。
政府による質の対策では、教育未来創造会議の第一次提言が示す通り、成長分野への大学等の再編、文理横断教育、学び直しが重要となる。文部科学省の「大学・高専機能強化支援事業」や経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」などが直近の施策である。さらに文部科学省は、2026年度予算で科学技術分野の支出を前年度比86億円増の9863億円に計上する。一部ではバラマキとの批判もあるが、必要な部分を改善しながら継続することで、人材戦略の質と量は向上する。
企業による質の対策としては、産学連携や独自の人材育成がある。2025年5月に開校したトヨタグループ5社による「トヨタソフトウエアカデミー」はその好例である。量の確保では、女性の理工系進出の促進、学び直し制度の拡充による人材確保と流動化、海外からの高度デジタル人材の受け入れ体制の整備が政府の役割となる。
海外の高度デジタル人材の活用は、世界各地に拠点を設けオンラインで業務を完結させるのが現在のトレンドである。BMWは2006年からソフトウエア開発のグローバルハブネットワークを構築し、1台の車両に5億行以上あるソフトウエアのコードを、世界中の1万人以上のITエンジニアで対応している。インドのKPITテクノロジーズは車載ソフトウェア専業のメーカーで、自動車メーカー6社のSDV開発に関わってきた。日本ではホンダと関係が深く、2030年までにホンダ向けのソフトウェア開発人員を2000人に拡大する計画である。
自動車メーカーにとって、人材の量を確保するためには、自国内の採用、国際ネットワーク構築、国内外のソフトウェア専業メーカーとの協業が重要となる。