不屈の定期航路「稚内~サハリン」、もはや運航再開は絶望的 ウクライナ侵攻の余波はあまりにも大きかった

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北海道の稚内とサハリンのコルサコフを結ぶ定期航路は、2022年も運航再開の見通しが立っていない。ウクライナ侵攻の影響は経済交流にも及んでいる。

ウクライナ侵攻による影響も

2018年の稚内・コルサコフ定期航路使用船舶「ペンギン32」(画像:稚内市)
2018年の稚内・コルサコフ定期航路使用船舶「ペンギン32」(画像:稚内市)

 北海道の稚内とサハリンのコルサコフを結ぶ定期航路は、2022年も運航再開の見通しが立っていない。対岸のロシア・サハリン州との交流を重視していた稚内市だが、ウクライナ侵攻の影響はここにも及んでいる。

 稚内市は対岸にサハリンを望む、国境の町だ。侵攻以降、さまざまな変化が起きている。2022年3月には外務省がロシアの危険情報のレベルを「渡航中止勧告」に引き上げたことで、市はサハリンの州都ユジノサハリンスクに設置していたサハリン事務所を当面閉鎖することに決めた。

 事務所は2002(平成14)年、道内の市町村として初めて設置された。以来、市職員ひとりと現地スタッフひとりが運営していた。常駐していた職員は、ビザ更新のためにたまたま一時帰国していたが、そのまま戻らなかった(『北海道新聞』2022年3月15日付朝刊)。

 ウクライナ侵攻の影響は経済交流にも及んでいる。稚内とサハリンを結んでいた貨物船のチャーター運航は3月の実施を最後に、2022年度は実施しないこととなった。侵攻の影響で取引に参加する企業が見込めないためだった。

 この事業は道北の自治体や経済団体でつくる「稚内・コルサコフ定期航路利用促進協議会」の主催で2016年から実施されていた。2021年度には16.9tの貨物の輸出入が行われている(『北海道新聞』2022年3月16日付朝刊)。

 貨物船の運航すら危うくなるなか、もはや運航の可能性すら消滅しているのが、旅客を扱う稚内とサハリンのコルサコフを結ぶ定期航路だ。

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