日産、追浜から九州へ「1000人規模」の転籍! 一時金最大1000万円超も、賃金カーブ分断が招く雇用&キャリアリスクとは
日産が追浜工場の車両生産を2028年3月に終え、最大1000万円超の補償を条件に九州への配置転換を検討する。年産24万台の拠点で稼働率は4割。補償の厚みより、雇用と技能の将来をどうつなぐのかが問われている。
EVシフトが広げる技能需給の分断

今回の転籍は、日産が重視する「技能の確保」を優先するあまり、制度の限界を補償金で覆い隠す暫定対応に近いのではないか。
持続的な解決策とはいい難い。転籍は本来、母体となる雇用から切り離される仕組みであり、雇用の連続性は制度上担保されていない。積み上げられた補償金も、効果は短期的だ。長期的な賃金カーブを分断し、家計のリスクを高める方向に働く。
今後はEVシフトが進み、
「需要が伸びる技能と縮小する技能が同時に存在する局面」
を迎える。労働力の集約では、人材を持続的に活用できない。むしろ将来的な余剰人員を生む土壌になりかねない。
今回の転籍が抱える構造的なリスクは、制度構造と市場環境の変化に起因する。追浜工場の従業員の約4割にあたる、1000人規模が転籍対象となる見通しだ。日産本体と子会社では、賃金体系や退職金制度、昇給の仕組みが異なる。その結果、将来的に賃金水準が下方に移る可能性は避けられない。
国内の乗用車生産は、軽自動車を除くと減少が続く。1990(平成2)年に911万台だった生産台数は、2024年には589万台まで落ち込み、3割超の減少となった。日産の販売台数も縮小が続く。ピークだった2017年の577万台から、2024年は約4割減の335万台に落ち込んだ。
日産九州工場は、同社の国内生産の約6割を担う拠点だ。ただし、日産の事業環境は不透明で、将来にわたって稼働が維持される保証はない。こうした構造変化を踏まえれば、転籍によって安定した将来が確約されるといった見方は成り立たない。