三菱自、5年ぶり「英国市場」に復帰! いったいなぜ? 売上回復だけでは語れない“真の狙い”を考える
アライアンスによる競争力

筆者への反論として、英国市場は縮小傾向にあり再参入は時期尚早との意見もある。しかし、英国自動車市場はコロナ禍前の販売水準に戻りつつある。2024年時点でEV比率は約20%、SUV比率は過去10年で30%以上上昇し、50%を超えている。英国市場は販売台数の縮小ではなく、EVとSUVを中心とした質の再編の過程にあり、三菱自のPHV×SUVという強みと一致する市場の再セグメント化が進んでいる。
欧州で競争力がないという指摘もある。三菱自は2012年までオランダのVDL NEDカーで組立生産を行っていたが、現在は欧州域内に生産拠点はない。しかし、アライアンスによる投資分散とPHVの競争力という構造的な優位性があり、決して競争力がないわけではない。アライアンスを通じて、各メンバーの異なる強み(ルノーの欧州での競争力、日産の電動化ノウハウ)を複合的に活用できる体制が整っている。
為替頼みの再参入はリスクが高いとの見方もあるが、英国の乗用車生産は過去10年で半減し、輸入比率は8割を超えている。為替変動は他メーカーも同様に影響を受ける構造であり、三菱自固有のリスクとはならない。
今後の制度および産業構造の再設計に向けたアクションとして、いくつかの方策が考えられる。制度面では、ZEV販売義務化に合わせ、PHVからEVへの移行ロードマップを政府と共有する必要がある。CO2削減実績の透明化により、アライアンス傘下の各モデルの認証手続きが簡素化される可能性がある。加えて、英国内の充電インフラ整備に共同投資すれば、将来の規制リスクをアライアンス全体で共有し、ヘッジするという効果も得られる。
産業構造では、三菱自は英国専用仕様の企画を避けることで開発費を抑制し、変動費を最小化してきた。PHV用電池の調達をアライアンス内で一元化すれば、調達コストを圧縮できる。また、英国内の販売網で電動車教育を体系化すれば、販売後の不具合発生率の低減にもつながる。