三菱自、5年ぶり「英国市場」に復帰! いったいなぜ? 売上回復だけでは語れない“真の狙い”を考える

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三菱自動車が約5年ぶりに英国市場へ復帰する。2035年のZEV規制を控え、PHV技術を軸にSUVを投入し、年3万台規模の販売でASEAN依存から収益を分散する戦略だろう。

英国市場の復帰戦略

 2025年上半期(4月~9月)の三菱自の世界販売台数は38万4000台で、前年同期比では6%減少した。日本以外のほとんどの地域で販売は前年を下回り、競争激化の影響でオセアニアやASEANでは落ち込みが大きかった。北米では追加関税も影響した。欧州での販売は2万3000台にとどまり、全体に占める割合は6%程度に過ぎない。かつて英国では年3万台前後を販売し、ドイツに次ぐ欧州2番目の規模を誇っていた。

 英国に投入される新型車は、グローバルラインアップから選定される見通しで、専用開発ではない。以前販売された主力車種はトライトンやアウトランダーなどのスポーツタイプ多目的車(SUV)で、英国復帰後もプラグインハイブリッド車(PHV)や4WDなどの技術が生かされたSUVが中心となる見込みだ。

 一方、英国政府は2035年までの新車販売のゼロエミッション化を目指し、メーカーに一定割合のゼロエミッション車(ZEV)販売を義務付ける「ZEVマンデート」を進めている。2024年のZEV達成目標は22%だったが、電気自動車(EV)市場の減速で達成は困難な状況だ。これを受け、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車の販売は2030年以降も継続が認められた。これは、EVシフトの移行期における需要の受け皿としてPHVの制度的な価値が高まったことを意味する。特に充電インフラが未だ十分に整っていない地域での実用性のニーズを満たす戦略的な意義がある。

 ブレグジットの影響も色濃く残る。イングランド銀行のシニアエコノミストらによる研究では、公式予測の2倍近い打撃が英国経済に及んだとされる。過去10年間でひとり当たり国内総生産(GDP)を6%~8%押し下げ、総額で1800~2400億ポンド(約37兆1000億~約49兆4000億円)に相当する影響があった。サプライチェーンの寸断も懸念される。

 為替も日本からの輸出に追い風となる。2020年初頭に140円台だったポンドは、現在では200円を超え円安が進行している。これにより日本からの輸出採算は改善され、一時的な利益に留まらず、英国という成熟市場における再投資や、販売促進のための価格競争力の源泉として活用できるという戦略的な柔軟性を提供する。三菱自が英国向け輸出を再開することは収益面でプラスに働く可能性が高い。

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