三菱自、5年ぶり「英国市場」に復帰! いったいなぜ? 売上回復だけでは語れない“真の狙い”を考える

キーワード :
,
三菱自動車が約5年ぶりに英国市場へ復帰する。2035年のZEV規制を控え、PHV技術を軸にSUVを投入し、年3万台規模の販売でASEAN依存から収益を分散する戦略だろう。

欧州規制の活用

 以上を踏まえると、三菱自が英国市場に復帰する目的は何かが問われる。売上回復のためなのか、電動化規制への適応なのか、あるいは世界販売減を補う市場再編なのか。以下では筆者(三國朋樹、モータージャーナリスト)の見解を示す。

 三菱自の英国復帰は、ZEV規制強化とルノー・日産とのアライアンスを前提に、欧州規制環境を再び活用する戦略だろう。狙いは、ASEANや北米での販売減を補う新たな収益源の確保にある。加えて、為替による追い風を生かし、輸出収益の再構築を進める狙いもある。

 欧州向け開発を縮小した現在、三菱自はPHVや4WDといったコア技術を生かす。英国市場の電動SUV需要を最小投資で取り込むことで、効率的な再成長を目指す戦略と考えられる。これは、規制への適応をブランド転換と欧州市場でのプレゼンス再構築のための戦略的なきっかけとして機能させているといえる。

 ブレグジット後の英国経済は投資や雇用が縮小しており、自動車市場は中長期的に制度リスクを抱える。再参入には、既存販売網を維持する三菱自の制度的アセットが不可欠だった。また、ZEV規制をクリアするには電動車のラインナップ拡充が求められるため、PHVを中心とした三菱自の商品戦略とも整合する。

 一方、三菱自は経営面でも厳しい状況にある。2025年9月期決算では売上高が前年同期比3.5%減の1兆2612億円、営業利益は同81%減の172億円、最終赤字は92億円に上った。主力市場での販売減や米国の追加関税が影響し、収益基盤の弱体化が喫緊の課題となっている。

 こうした状況下、英国復帰によって年3万台規模の販売が見込まれることは、グローバル生産における固定費の分散に効果がある。これにより、製品ごとの採算性が向上し、全社の収益基盤の安定化に寄与する。円安基調も追い風となり、日本からの輸出回復には絶好のタイミングだ。欧州向け専用開発を凍結した三菱自にとって、アライアンスを活用した低投資の電動化が現実的な選択肢となる。

 英国市場におけるPHV比率は約9%で、年17万台前後の需要がある。三菱自はかつて「アウトランダーPHEV」を年1万台近く販売した実績があり、市場との親和性は高い。しかし、環境規制の厳格化でEV主導が進む英国では、PHVはあくまで経過措置的な需要にとどまる。三菱自にとって、このタイミングでの再参入は、PHVが移行期需要として評価される期限付きの窓であり、この機会を逃すと、本格的なEVシフト市場では新規参入が極めて困難になるという時間的な制約がある。

全てのコメントを見る