「運ぶ」「乗せる」の境界破壊? 「貨客混載」で実現する地方創生、持続可能な輸送とは何か?

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トラックドライバー有効求人倍率2.58倍の人手不足を背景に、旅客と貨物を同時輸送する「貨客混載」が注目を集める。北海道・奥尻島の実証事例では、高齢化率41%の離島で物流と移動を両立し、地域交通の柔軟性と効率性向上に寄与している。

交通空白の解消と地域貢献

奥尻町とヤマト運輸によるライドシャア実証運行の様子(画像:ヤマト運輸)
奥尻町とヤマト運輸によるライドシャア実証運行の様子(画像:ヤマト運輸)

 北海道の奥尻島では、ヤマト運輸のセールスドライバーによる貨客混載型の公共ライドシェア事業が実証運行されている。奥尻町とヤマト運輸は、集配用ワゴンを活用し、物流と旅客輸送を組み合わせた柔軟な運行体制を構築した。地域住民や観光客の移動を支え、新たな交通手段の確立を目指す取り組みだ。

 奥尻町は離島で高齢化率が41%に達する。日常の買い物や通院など、生活に必要な移動手段の確保が課題となっている。町内のタクシーは1社のみ、バスは1日9便しか運行されておらず、時間帯による

「交通空白」

が生じている。こうした状況を解消するため、すでに地域にある車両や人材、物流ネットワークを有効活用する試みが進められている。

 日中はヤマト運輸のセールスドライバーが荷物配達の合間に旅客輸送を行い、夕方から夜間は町民ドライバーが副業として運行する。限られた資源を効率的に活かしつつ、地域貢献と雇用創出を両立している点が特徴だ。

 さらに、この取り組みは輸送効率の改善に留まらず、離島における移動弱者の支援としての意味合いも持つ。物流や交通サービスを組み合わせることで、移動に困る高齢者や観光客の利便性を向上させ、地域生活の質向上に寄与する実証例となっている。地域経済の活性化や移動環境の改善といった効果も期待できるため、モビリティ経済の視点からも注目に値する取り組みである。

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