「運ぶ」「乗せる」の境界破壊? 「貨客混載」で実現する地方創生、持続可能な輸送とは何か?
トラックドライバー有効求人倍率2.58倍の人手不足を背景に、旅客と貨物を同時輸送する「貨客混載」が注目を集める。北海道・奥尻島の実証事例では、高齢化率41%の離島で物流と移動を両立し、地域交通の柔軟性と効率性向上に寄与している。
貨客混載の経済効果

旅客輸送の車両やルートを貨物輸送に活用し、逆に貨物輸送の車両を旅客輸送に使う取り組みが「貨客混載」だ。バスやタクシー、鉄道、トラックなどを両方の輸送に活かすことで、効率的な運行が可能となる。
物流業界では、人手不足や小口荷物の増加が課題となっている。厚生労働省の2025年9月発表によると、トラックドライバーを含む自動車運転職の有効求人倍率(常用・パート含む)は2.58倍に達した。この状況で、貨客混載は
・輸送効率の向上
・コスト削減
に加え、車両や人材の稼働率を高め、地域の物流・交通インフラの活用にもつながる。
また、企業にとっても社会的信頼の向上や地域貢献の機会として価値がある。貨客混載を通じて、地域住民の移動や物流の課題解決に関与することは、企業ブランドの強化にもつながる側面がある。
制度面でも進展がある。国土交通省は2017年に、旅客・貨物双方の許可を取得すれば過疎地域で両事業を並行できる「かけもち」制度を導入した。さらに2023年には、過疎地域以外でも関係者協議を条件に全国展開が可能となる制度改正を行い、貨客混載の活用範囲が広がった。
こうした取り組みは、効率化に留まらず、地域経済や交通インフラの強化、さらには企業と地域の関係構築にも影響を与える可能性がある。今後、貨客混載の活用が広がることで、地方や都市部における輸送の柔軟性や持続可能性を高める道筋が見えてくるだろう。