南武線「羽田直通」は夢か幻か? 立川市長も熱望、沿線100万人が待ち焦がれるアクセス革命どうなる

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南武線を羽田空港まで直通させれば、西東京エリアからの所要時間を最大20分短縮し、多摩地域の空港アクセス格差を解消できる可能性がある。財政・技術面の課題は大きいが、沿線人口100万人超への経済効果も期待される注目プロジェクトである。

多摩地域の“羽田アクセス格差”

羽田アクセス線・南武線位置図(画像:北村幸太郎)
羽田アクセス線・南武線位置図(画像:北村幸太郎)

 前回、小池都知事が期待を示したJR羽田空港アクセス線西山手ルートの中央線直通案を取り上げたが、羽田アクセスの改善を求める声は中央線沿線だけにとどまらなかった。立川市をはじめとする南武線沿線や多摩地域からも、羽田空港へのアクセス改善を求める意見が多く寄せられている。立川市の酒井大史市長は筆者の取材に対し、南武線を活用した羽田アクセス改善について次のように述べた。

「立川と国内各都市や世界との距離が縮まるプランとして、私が東京都議会議員の時から、南武線や南武支線、東海道貨物支線などを活用した立川から羽田空港までのダイレクトアクセスを提案してきました。実現するためには南武線の高架化や沿線自治体のまちづくり、JRの計画など多くのハードルがあり、時間を要します。いずれかの形で将来的に立川からの空港アクセス向上、立川市を含む多摩地域に様々な国からお客様が来訪し、人的交流、人流の確保につなげていけるような施策として沿線市や関係機関に働きかけていきたいと考えています」

 昨今の鉄道改良構想のなかで、自治体首長の熱意がここまで強い案件は珍しい。その影響か、市民からの反対意見はゼロである。酒井市長によれば、市民からは

「私のSNSを通して「早く実現してほしい」など好意的な意見をいただいています。また、東京都商工会連合会から東京都への令和7年度予算に対する要望書において、南多摩・西多摩地域へのインバウンド効果、南武線沿線地域の活性化が期待できる南武線の羽田空港への乗り入れが要望されています」

という。今回は、改善策として挙げられている南武線の羽田空港乗り入れ案を検討する。
 まず、多摩地域から羽田空港へのアクセス現状を整理すると、主に三つの手段がある。

 自家用車や空港バスは乗り換えが不要で便利に見えるが、道路交通であるため渋滞リスクが高く、定時性は期待できない。そのため、時間に余裕を持ったスケジュールが必要となる。

 次に鉄道でのアクセスだ。JR中央線や横須賀線、私鉄各線を経由して山手線や京急線に乗り換えるルートは定時性は高いものの、乗換回数が多く、所要時間は概ね1時間前後を要する。八王子から東神奈川乗換で約1時間17分、立川から新宿・品川乗換で1時間8分、府中から明大前・渋谷・品川乗換で1時間1分、高幡不動から明大前・渋谷・品川乗換で1時間10分、京王多摩センターから稲田堤・京急川崎・京急蒲田乗換で1時間11分、新百合ヶ丘から下北沢・渋谷・品川乗換で1時間、たまプラーザから溝の口・京急川崎・京急蒲田乗換で56分、日吉から多摩川・京急蒲田乗換で42分かかる。南武線沿線から京急川崎乗換の場合、立川から1時間10分、登戸から50分、武蔵溝ノ口から46分、武蔵小杉から33分となる。

 さらに、モノレール経由のルートも検索してみたが、立川からだと約1時間35分かかり、京急線経由より時間もコストも乗換も不便である。モノレールは山手線より東側の地域の利用者向けの交通手段といえる。いずれのルートもスマートなアクセスとはいえないのが現状である。現在、

・JR羽田アクセス線西山手ルート
・中央線直通

などの改善案が議論されているが、具体的に実現するには相当の時間を要する見込みだ。一方で、読者アンケートや立川市長の発言から、南武線経由で羽田空港へのアクセス改善を求める声は根強い。

 筆者は、川崎駅を通るルートとして、川崎市の「京急大師線の羽田空港とJR川崎駅への延伸」や「京急大師線地下化事業」と併せて線路幅などをJR規格化し、南武線と直通運転による羽田乗り入れを検討すべきだと考える。

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