南武線「羽田直通」は夢か幻か? 立川市長も熱望、沿線100万人が待ち焦がれるアクセス革命どうなる
既存構想との比較と位置づけ

既存の羽田アクセス構想と今回の案を比較してみる。前回の記事で取り上げた西山手ルートと中央線直通案は、新宿経由での利便性向上には一定の効果があるだろう。しかし、運行経路が長く、設備改良コストも大きくなると見込まれる。さらに朝ラッシュ時は、西山手ルートが通る埼京線や中央線のダイヤが乱れやすく、定時運行は期待しにくい。南武線ルートを支持するコメントには、この点を指摘する声も複数見られた。
次に西山手ルート(JR東日本構想)単体での効果を考える。例えば多摩センターから明大前や渋谷で乗換え、羽田まで行く場合は約10分短縮できる。品川での乗換も省略できるため利便性は向上する。ただし、立川や八王子など北多摩方面からの所要時間短縮効果は限定的である。
最後に、南武線の羽田直通案を検討する。この案は元JR東日本社員で鉄道コンサルタントの阿部等氏が、2015年2月16日号の現代ビジネス「【沿線革命021】 羽田空港への南武線の乗り入れで500万人近くが便利に」で提言したのが始まりである。南武線の川崎駅の隣、尻手駅から伸びる支線と浜川崎駅から東海道貨物線を活用し、京急の小島新田駅付近から羽田空港中央部へ新線を延伸する構想だ。当時着工前だった「多摩川スカイブリッジ」と一体で施工することを想定しており、北陸新幹線の九頭竜橋のような鉄道・道路併用橋をイメージしたと思われる。既存路線をほとんど改造せずに、安価に実現できる利点がある。
しかし、ひとつ大きな課題がある。それは川崎駅を通らないルートである点だ。川崎市民にとっては不便であり、既存の川崎発着列車の一部を羽田方面に振り分けると、川崎駅の本数が減少する恐れもある。前述の記事では、快速を5分おきに増発し、川崎方面と羽田方面に半数ずつ振り分ける案となっている。確かにこれだけ増やせば利便性低下は避けられる。しかし、需給バランスを考えると、現実的な運行体系かというと疑問が残る。川崎駅も経由できるルートを検討すべきである。この点について、立川市の酒井市長は次のように述べている。
「羽田空港へダイレクトアクセス構想は、立川市民のみならず多摩地域住民の空港へのアクセスにかかる利便性向上及び羽田空港から多摩地域へ来る方の利便性向上が期待できます。JR南武線については、現在高架化に向けて事業が進んでいますが、実現のためのルートは様々な選択肢が考えられます。今後も国・関係自治体・鉄道事業者の計画や動向を注視してまいります」
いずれにしても、南武線経由案は多摩全域を面的にカバーできる上、既存インフラを活用する余地が大きいことは間違いない。