南武線「羽田直通」は夢か幻か? 立川市長も熱望、沿線100万人が待ち焦がれるアクセス革命どうなる
川崎駅経由ルートの構想と効果

現行の南武線を川崎駅経由で羽田空港方面へ延伸するには、三つの取り組みが必要である。
まず、南武線の川崎駅と京急大師線の京急川崎駅を地下化し、地下で接続する必要がある。京急大師線は線路やトンネル、車体幅がJRと異なるため、JR規格に改造しなければならない。現実的でないと思われるかもしれないが、かつて京急大師線は川崎縦貫高速鉄道に乗り入れ、新百合ヶ丘を経て小田急多摩線と直通する構想があった。京急川崎駅の地下化により、予算上断念していた本町踏切など2か所の踏切除去も可能になる。また、2026年に再開予定の鈴木町~大師橋間の地下化事業でトンネル幅をJR規格にできれば理想的である。難しければ線路幅のみJR規格とし、JR側の電車に京急車体幅の新型車両を用いる形となるだろう。
次に、地下化工事中の京急大師線を羽田空港まで延伸する必要がある。現計画では鈴木町~小島新田間が地下化対象だが、小島新田駅は地上のまま残る。筆者は小島新田駅も地下化し、そこから羽田空港へトンネルを延伸する案を提案する。市長が推す貨物線活用案でも、小島新田駅付近から新線建設は避けられず、延伸距離は変わらない。延伸区間には国際線ターミナル駅も設置する。国際線ターミナル駅北側には広大な駐車場があり、地下駅の施工難易度は高くないと考えられる。
さらに、南武線内の待避設備も改良が必要だ。羽田アクセスの速達性向上には、速達列車の運行が不可欠である。現在、南武線の快速電車は日中平日毎時2本、土休日毎時3本、平日夕ラッシュ時に4本にとどまる。これを各駅停車と同じ10分おき、毎時6本として交互に運転できれば利便性は大幅に向上するはずだ。また、空港アクセス路線として、運転時間帯も平日・土休日問わず朝夕に拡大するべきである。しかし、平日朝は1時間最大23本の各駅停車が走るため、快速の増便は簡単ではない。各駅停車の一部を快速電車に置き換えるとしても、現行線路設備では速達性向上のハードルは高い。そこで再開発計画のある登戸駅、留置線用地が活用できる武蔵溝ノ口駅、本数の多い朝ラッシュ時でも上下線同時に追い越しができる2ホーム4線化の実施と、矢向駅も留置線用地を活用し上りだけでも追い越し設備の設置があっていいだろう。
これらの施策を実施すると、多摩地域各地から羽田空港までの所要時間は大幅に短縮される。八王子から立川乗換で1時間10分、立川からは乗換なしで54分、府中から分倍河原乗換で53分、高幡不動から分倍河原乗換で1時間、京王多摩センターから稲田堤乗換で51分、新百合ヶ丘から登戸乗換で45分、たまプラーザから溝の口乗換で40分、日吉から武蔵小杉乗換で30分となる。南武線沿線の場合は、立川から54分、登戸から32分、武蔵溝ノ口から28分、武蔵小杉から20分で到着できる。現状と比べると、所要時間は最大20分短縮され、2~3回あった乗換回数は1回に減少する。
立川駅からも15分程度短縮され、八王子駅からも中央線から南武線への乗換だけで羽田に行けるようになる。多摩地域、立川、登戸など広域からの空港アクセスが一挙に改善されるのだ。南武線は中央線、京王線、小田急線、田園都市線、東横線など多くの路線と接続しており、沿線人口100万人超が恩恵を受ける可能性がある。南武線沿線の住民だけでなく、空港利用者増加による観光やビジネス需要にも直結する。
さらに、空港需要を踏まえた快速列車の増発により、10分おきの快速運転が可能になれば、沿線内での利便性も大幅に向上する。JR羽田アクセス線の開通で京急の乗客は減ると予想されるが、南武線からの送客でその減少分を補える可能性がある。また、高速バスからのさらなる空港需要取り込みにもつながり、大きなプラス効果が期待できる。高速バスの減便や撤退は、バスドライバー不足の緩和にも寄与するだろう。さらに、多摩地域や東海道線沿線から京急大師線沿線の工業地帯への通勤や、お正月の川崎大師参拝も便利になる。