「休憩できない」「トラックも停められない」 “観光地化”するサービスエリアの落とし穴! 年1000億円商業圏の現実とは
高速道路SA・PAは年間1000億円規模の商業拠点に成長した一方、物流や高齢ドライバーは駐車不可に。観光化と安全確保の両立が課題となる。
再設計への処方箋

観光地化自体を否定する必要はない。問題は、休憩機能と観光機能が明確に分離されていない点にある。まず取り組むべきは、駐車マスの用途を明確に分けることだ。トラック専用区画や短時間休憩専用区画を整備し、滞在時間に応じた管理を導入すれば、回転率の低下を抑えつつ、安全な休憩環境を維持できる。欧州ではオンライン予約や滞在時間連動課金が一般化しており、交通ネットワーク全体の効率向上に寄与している。
次に、地方の小規模PAにおける休憩機能の強化が必要だ。コンビニ、トイレ、給油という基本三要素に特化させることで、低コストで維持できる休憩拠点を全国ネットワークに確保できる。観光型SAとの機能分離は、物流や長距離移動者が安心して休める環境を保証することにもつながる。自治体やNEXCOと連携した区分制度の構築が望まれる。
さらに、データ活用による動的運営も不可欠だ。駐車状況や滞在時間をリアルタイムで可視化し、AIによる渋滞予測とナビアプリ連動によって利用者を誘導すれば、施設集中の緩和と効率的な利用が可能になる。これにより、特定施設への偏りによる道路ネットワーク全体の負荷増大を抑えられる。
高速道路は公共インフラでありつつ、利用者の行動や商業活動の影響を受けやすい空間である。再設計では、安全性・効率性・利便性を統合的に考慮し、休憩と観光の機能を制度的に整理することが、持続可能なネットワーク運営のポイントとなる。