「休憩できない」「トラックも停められない」 “観光地化”するサービスエリアの落とし穴! 年1000億円商業圏の現実とは
高速道路SA・PAは年間1000億円規模の商業拠点に成長した一方、物流や高齢ドライバーは駐車不可に。観光化と安全確保の両立が課題となる。
「稼げるSA」と「見捨てられるPA」

経済構造の面でも歪みが進んでいる。売上が上位に集中する一部のSAは、経済的な影響力を強めている。人気SAでは集客力の高さを背景に、飲食や物販の収益が集中する一方で、地方部のPAは人員削減や店舗撤退が進み、利用者が「休憩すら困難」と感じるケースが増えている。
観光地化は特定の拠点に利益を集中させる一方で、全国ネットワークとしての均衡を損なっている。モビリティ経済の視点では、道路利用者の移動効率や休憩環境の公平性が損なわれることは、全体としての物流や観光の効率にも影響する重要な課題である。
本来、SA・PAはどこでも安全に休憩できる道路網の一部として設計されてきた。しかし民営化以降、
「経済合理性」
が優先され、施設の運営格差が広がっている。この状況は、公共インフラとしてのSA・PAと収益追求型の経営方針との間に存在する構造的な乖離を浮き彫りにしている。
地方のPAにおけるサービス縮小や設備不足は、利用者の行動パターンやルート選択にも影響する。物流車両の休憩確保や観光客の快適な移動環境に影響が及ぶことから、モビリティ経済全体の効率性や安全性に直結する課題である。
こうした状況を改善するには、収益性の高い拠点と低収益拠点のバランスを考えた運営方針が不可欠である。SA・PAネットワーク全体の効率と安全を確保しつつ、地域格差や滞在時間の偏りを調整することが、今後の高速道路運営における重要なテーマとなる。