「完璧主義の呪縛」に捕らわれた日本車メーカー bZ4X開発5年 vs SEAL18か月という現実――構造的遅延を断てるかのか

キーワード :
,
EVと自動運転の融合が進む世界市場で、日本は完成車開発に固執し、EV部品自給率10%未満、国内就業人口減少など構造課題に直面する。部品、メンテナンス、知財を再設計し、社会実装単位で競争力を取り戻す戦略が急務である。

市場投入を阻む完璧主義

自動車工場のイメージ。生成AIで作成。
自動車工場のイメージ。生成AIで作成。

 日本自動車産業が直面する問題は、

・技術革新を阻む「完璧な完成品信仰」と品質主義の呪縛
・電動化で主導権を失った日本のサプライチェーン
・国内需要の縮小と免許人口の激減

という大きく三つの構造に分けられる。それぞれ説明していこう。まずは「技術革新を阻む「完璧な完成品信仰」と品質主義の呪縛」から解説する。

 日本自動車産業の成功は、「完全な完成品を出す文化」に支えられてきた。しかし、この文化が市場投入のスピードを奪う結果になっている。中国の電動車市場を取材すると、まず市場に出し、走らせながら改良し、質を高める方式が採用されていた。この手法は乗用車だけでなく商用車にも及ぶ。日本にはこうした調整型の志向はほとんどない。

 開発期間の例を比較すると、トヨタの新型電気自動車(EV)「bZ4X」は約5年を要したが、中国BYDの「SEAL」はわずか18か月で量産化にこぎ着けた。日本の技術者のレベルは高く、学会論文や国際会議での発表も多い。特許も豊富で、試作能力も俊敏だ。しかし、

・社内稟議
・責任構造
・安全基準の解釈

の複雑化が意思決定を遅らせている。賛否両論はあるが、あえて問いたい。この構造を変えなければ、電動化×自動運転という

「国際基準の土俵」

で戦うのは困難だ。市場に出さなければ、PDCA(プラン、ドゥ、チェック、アクション)の

・チェック(測定・評価)
・アクション(対策・改善)

に進めないのである。

全てのコメントを見る