JR四国「脱・四国戦略」本腰? 岡山駅前「新ホテル出店」は必然? 制約を打破する「本州進出」と多角化の勝算とは

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JR四国とJR四国ホテルズは、岡山駅前再開発に177室の新ホテルを2027年春開業予定と発表した。四国島外進出を加速させる戦略で、宿泊特化型からシティホテルまで多ブランド展開を進め、2030年度までに年間売上2億円規模を目指す。

京都発簡易宿所事業の展開

2020年4月に開業した「貸切旅宿 4S STAY 阿波池田 本町通り」(写真:JR四国)
2020年4月に開業した「貸切旅宿 4S STAY 阿波池田 本町通り」(写真:JR四国)

 JR四国ホテルズが四国内外で展開するホテルは、一定規模の客室を持つビジネスホテルやシティホテルが前提である。しかし、JR四国自体も宿泊施設事業に参入していた。2018年4月から「4S STAY(フォースステイ)」のブランドで簡易宿所事業を開始したのである。

 この事業は、旅館業法に基づく簡易宿泊営業許可をJR四国が取得し、運営実績のある事業者に賃貸または業務委託する形で運営される。注目すべきは、第1号店を四国内ではなく京都市に出店した点である。京都はインバウンド需要が旺盛で、簡易宿所事業が成熟している市場であった。新築物件を取得し、先進地で事業ノウハウを習得することで、四国での展開の足掛かりとする狙いだった。

 その後、四国内の物件と連動させ、四国へのインバウンド誘客増を目指す意図もあった。施設内には随所に四国の工芸品を取り入れ、京都風の空間の中でさりげなく四国文化を発信していたのである。

 結果、同年11月に四国内1号店となる「4S STAY阿波池田駅前」を開業した。その後も阿波池田エリアで2店舗、高松エリアで2店舗、さぬきエリアで1店舗を展開し、2025年10月3日現在、開業準備中を含め6店舗となっている。

 京都の1号店は2020年に閉館した。コロナ禍の影響か否かは不明である。しかし、その後の展開を見る限り、当初の目的であった事業ノウハウの取得は達成できたといえる。

 現在、出店エリアは香川県に集中している。2030年度までに四国各地へ約20店舗を展開し、年間売上約2億円を目指す方針だ。

 ただし、これらの簡易宿所はいずれも客室数10室未満や1棟貸しといった規模である。JR四国グループの収益を支える大きな柱とはいいがたい。

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