「EVの公用車」は必要か不要か? 脱炭素と防災の「板挟み」――自治体直面の現実を考える
防災と環境政策の板挟み

向日市は2023年に「第2次向日市地球温暖化対策実行計画」を策定し、市内の温室効果ガス排出量を2030年度までに2013(平成25)年度比で半減させる目標を掲げた。公用車63台から排出される温室効果ガスを、2030年度までの10年間で20t削減することを計画している。この目標を達成するには、
「公用車の半数近く」
となる30台超のEV導入が必要だが、現時点で23台がEVに切り替えられたにとどまる。向日市の公用車の多くは
・軽トラック
・軽ワゴン車
で、ガソリン車のまま運用する方針も示されている。EV導入の目標台数は確定しておらず、市担当者は防災部局と協議しながら検討するとしている。
EVは地球温暖化対策として有効である一方、災害時に停電が長引けば走行できないリスクを抱える。市は水道やガスに比べ電力復旧は早い傾向があるとし、EVを非常用電源として活用する期待も寄せている。
しかし現実には制度疲労の兆候が見え始めている。公用車EV導入は
「環境政策と防災の板挟み」
にあり、双方を十分に両立させる制度設計はなされていない。温室効果ガス排出量は2013年度の3949tから2030年度には1974tに削減する目標で、少なくともさらに7台超のEVが必要だ。しかし2030年度までに残された期間は5年余りにすぎない。監査委員の指摘でEV導入が停滞すれば、追加台数の導入か他の手段を検討せざるを得なくなる。
災害時に電力インフラが途絶し、停電復旧に数日を要する場合もある。停電中にEVが稼働できる可能性は、復旧が長引くほど低下する。不確実性の高さが環境政策との両立の難しさを際立たせている。
防災対応車両にEVを活用することには潜在的な脆弱性がある。長期停電時にはEVが走行できず、燃料備蓄や給油が可能なガソリン車の方が災害対応に優位とする意見もある。また、温室効果ガス削減という政策目標と現実の運用とのギャップも顕在化している。向日市では、環境政策と防災対応の両立は困難を極め、制度疲労が深まるとの懸念が広がりつつある。政策目標の達成見通しは不透明となり、市政レベルで課題として現実化している。