国内初「フルフラット座席」――高知発「フラットン」は夜行バスを変えるのか? 12月運行開始、収益性・安全性の壁とは

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高知駅前観光は国内初のフルフラットシート夜行バス「フラットン」を本格運行する。高知~東京間24席で片道1万4000円、SNS評価も高く、快適性・収益性・安全性の両立と知財活用による全国・海外展開の可能性が注目される。

フルフラットの安全課題

 フルフラット車両では、ガードやベルトでのダブル固定がなされる。しかし、上下2段のベッド構造ゆえ、転落や思わぬケガのリスクは残る。若い女性など、安全に移動したい利用者もいる。

 イビキが大きく周囲に迷惑をかけないかを心配する人も少なくない。さらに、車内で仕事をする人が増える可能性もある。その場合、音や視線から身を守る必要が生じる。個室の確保によるプライバシー保護や犯罪防止など、今後の工夫の余地は大きい。

 国土交通省は、高知駅前観光の取り組みを前提として、「フルフラット座席を備える高速バスの安全性に関するガイドライン」を公表している。高速バスのフルフラット座席に関する安全対策を体系的にまとめたものである。概要は、

・座席を前向きに配置する
・転落防止プレートや衝撃吸収材を備える
・保護部材を設置する
・2点式座席ベルトを装備する

ことなどである。3点式ベルトは衝突時に乗客の頸部を圧迫する可能性があるため使用されない。

 フルフラット座席対応のポイントは整理されているが、高齢者や障がい者、子ども(現行では6歳以上を想定)の通路寸法や車内全体の流動性検討は十分とはいえない。人間中心設計(ヒューマンセンタードデザイン)の観点で、多様化する利用者の身体特性や生活行動を反映した基準作りが期待される。

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