国内初「フルフラット座席」――高知発「フラットン」は夜行バスを変えるのか? 12月運行開始、収益性・安全性の壁とは

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高知駅前観光は国内初のフルフラットシート夜行バス「フラットン」を本格運行する。高知~東京間24席で片道1万4000円、SNS評価も高く、快適性・収益性・安全性の両立と知財活用による全国・海外展開の可能性が注目される。

高知発快眠バスの評価

 高知駅前観光が導入する車両は、フルフラットシートを上下2段、3列で配置している。シート幅は48cm、長さは180cmで、下段の縦空間は51cm、上段は場所により51cmから73cmとなる。着席シート仕様にも変更可能で、幅48cm、高さ150cmから172cmとなるが、乗車時は常にフルフラット状態で使用される。

 1ユニットは2座席で構成され、上下2段のフルフラットシートを形成する。12ユニットにより24席が確保される。高速バスの横幅は250cmで、ふたつの通路幅は最大でも50cm程度である。そのため、通路の歩きにくさや整備・清掃の効率低下が懸念される。

 モニター運行期間中の利用者の声を、筆者(西山敏樹、都市工学者)はYouTubeやSNSで確認した。国内初のフルフラットシート車という期待の大きさもあり、

「いつの間にか寝て移動できた」
「フルフラットは良いが寝返りは打ちにくい」
「安く寝て行けるがやや窮屈」

といった声が聞かれる。

 全体としてフルフラットシートは高評価だが、窮屈感は否めない。特に大柄の男性にとっては厳しい寸法である。体験動画や車内レイアウトを分析すると、

・高齢者
・障がい者

にとっては座席や通路の移動が難しい場面もある。清掃性や整備性にも影響があり、効率低下の可能性がある。ユーザーと提供者の双方が扱いやすいユニバーサルデザインの観点から見ると、改善の余地があることが分かる。

 同社は改良型ユニットを搭載した車輛を、2026年に順次導入する予定である。2025年10月31日、東京都江東区で開催される「第11回バステク in 首都圏」では、モニター運行時の利用者の声を反映した改良型ユニット搭載車両を初公開する。改良点としては、

・充電ポートや収納ネットの設置
・座席出入口の拡張

などが計画されている。フルフラットシートの車輛は靴を脱いで乗車する仕様だが、靴置き場も確保され、カーテンや小物入れも設置される。狭い空間でもユーザーが求める機能を順次追加し、快適性を高める方向性が見える。コンパクト性の維持にも期待できる状況だ。

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