地元では反対運動ぼっ発! テスラの「ドイツ工場」操業から読み解く、深刻な水資源問題とは

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テスラ初のヨーロッパ工場が3月22日、ドイツのグリューンハイデで操業を開始した。しかし、地元住民による飲料水問題への反対運動も起きている。

自動車産業における水の使用量は

トヨタ自動車の2020年の水使用量(画像:トヨタ自動車)
トヨタ自動車の2020年の水使用量(画像:トヨタ自動車)

 テスラ社は、水使用量を年間140万立方メートルとしている。これを年間生産台数50万台で割ると、車1台あたり2.8立方メートルとなる。では、この数字をどのように評価すればよいのだろうか。

 ここで、トヨタにおける水使用量を見てみよう。

「サステナビリティデータブック」(2022年1月最終更新)によると、2020年の水使用量は、日本国内の工場で620万立方メートル、全世界で3680万立方メートルだった。トヨタ自動車および連結会社の生産拠点と非連結会社の生産拠点を総合した1台あたりの水使用量は、4.00立方メートルである。

 単純比較では、テスラの水使用量のほうがトヨタよりも少なく見える。しかしながら、テスラの水使用量と生産台数が見込みベースであることや、カウント方法が不明であることを踏まえると、単純に優劣を判断することは難しい。とはいえ、4.00立方メートル、つまり4000lを、一般的な家庭の入浴で使用される200lで割ると、

「お風呂20回分」

となる。車1台を生産するにあたって、水は意外と大量に使用されていることを実感できるだろう。

 参考までに、トヨタの高岡工場における水使用量の内訳を見ると、塗装工程が63%と最も多いという。塗装前の車体の洗浄に水を多く使用しており、その使用量削減に向けて再利用などさまざまな工夫がされている。水は、自動車産業において、環境的にもコスト的にも対策が重視される要素だ。

工業全体における水使用量

業種別淡水使用量の推移(画像:国土交通省)
業種別淡水使用量の推移(画像:国土交通省)

 ここで、自動車産業だけでなく、工業全体における水の使用量を俯瞰(ふかん)してみる。

 表は、国土交通省水資源部による「業種別淡水使用量の推移」である。

 工業用水の業種別シェアでは、化学工業および鉄鋼業が他業種より抜きんでて使用量が多いことがわかる。この2業種にパルプ・紙・紙加工品製造を加えた3業種が、全体の73%を占めている。

 工業全体で見ると、自動車産業が位置する輸送用機械器具製造業は、他業種と比較して多量に水を使用しているとはいえない。とはいえ、豊富に水が使用できることを前提に工業が成り立っていることには変わりない。

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