「赤ちゃんを守る最後の切り札」──ドクターカーに託された新生児救命、遠隔地で続く終わらない闘いとは

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全国の産婦人科医は減少を続け、分娩施設の6割が空白市町村に集中。NICUは稼働率90%超で逼迫するなか、24時間体制のドクターカーが地域医療の格差是正と新生児救命の最前線を支えている。

ドクターカー高度化進展

新生児のイメージ(画像:写真AC)
新生児のイメージ(画像:写真AC)

 政府は2024年度、国庫補助として「医療施設等経営強化緊急支援事業」を予算化し、条件を満たした医療機関に給付金を支給している。ICT機器の導入による業務効率化や職員の賃上げ、タスクシフトやシェアによる職員処遇改善なども進められている。

 岡山県では2019年、岡山大学病院を中心に七つの高次医療機関で日本初の周産期緊急搬送システムを構築した。これにより広域エリアで迅速に妊産婦の搬送や搬送先施設への情報共有が可能となった。三重県、神奈川県、長野県でも同様の体制が整備されている。

 長野県では医師や看護師の偏在解消を目指し、医師・看護人材確保対策課を設置した。医師や助産師、看護師の養成・確保に関する企画立案や実施を担っている。長野県立こども病院のドクターカーは、クラウドファンディングや募金、企業の協賛を経て2018年3月にリニューアルした。近年、医療機関では国や自治体の施策に加え、クラウドファンディングや寄付など多様な資金調達が進んでいる。

 新生児医療では設備や機器の高度化が進んでいる。2025年8月、東京都立小児総合医療センターで新型ドクターカーの運用が開始された。この車両にはリアルタイム遠隔医療システムが搭載され、遠隔地からカメラを操作して患者やスタッフの状況を把握できる。国立成育医療研究センターのNICUではAIシステムを導入し、新生児の足や頭、手の動きを捉えて発達リスクを予測する研究が進められている。

 厚生労働省はリスクの高い妊産婦や新生児に適切な医療を提供する周産期医療体制の構築を推進している。多くの自治体では、少子高齢化や人口減少といった社会問題も踏まえた意見交換会や検討会が実施されている。

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