「赤ちゃんを守る最後の切り札」──ドクターカーに託された新生児救命、遠隔地で続く終わらない闘いとは

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全国の産婦人科医は減少を続け、分娩施設の6割が空白市町村に集中。NICUは稼働率90%超で逼迫するなか、24時間体制のドクターカーが地域医療の格差是正と新生児救命の最前線を支えている。

ドクターカー運用の壁

 全国の医師数は年々増加しているが、地域や診療科、医療機関の種類によって医師の偏在が進んでいる。そのため、医師数全体のバランスや変化するニーズに柔軟に対応できる体制の構築が必要である。これには現状を常に把握し、更新しやすい制度設計が重要である。硬直的に運用される整備基準を、流動的な仕組みに変えることが求められる。

 ドクターカーを24時間体制で運用している医療機関は全体の

「2割」

にとどまる。医師や運転手の不足が主な原因と見られる。2008(平成20)年時点で新生児用ドクターカーは18都道府県にあり、平均1.6台に過ぎなかった。分娩を担う医療機関や施設の減少により、運用台数はさらに減ることが見込まれる。

 これにより、施設外分娩のリスクが高まり、

・分娩費用の増加
・新生児の低体温症
・呼吸障害

などの健康リスクも懸念される。

 補助金にも格差が生じている。厚生労働省は2014年に「地域医療介護総合確保基金」を創設し、都道府県が市区町村の医療・介護計画をまとめて国に提出し、実施する取り組みを支援している。産科や小児科も支援対象に含まれ、活用メリットは大きい。

 しかし、費用の3分の2を国が負担する一方、残りは都道府県が負担する仕組みである。財源を確保できない場合、計画の実施は困難となる。また、「地域医療勤務環境改善体制整備事業」や「勤務環境改善医師派遣等推進事業」などの助成でもトラブルが発生している。

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