「EV100%は非現実的」フォルクスワーゲンCEOが断言──EUエンジン車禁止見直し前倒しに、日本メーカーは活路開けるか
欧州自動車市場はEV販売が前年同期比24%減と失速し、BYDなど中国勢が攻勢を強める。IAA2025ではEUの2035年エンジン車禁止見直しと「Eカー構想」が浮上。雇用数百万人を抱える産業の命運を左右する決断が迫られている。
中国EV攻勢で揺れる欧州市場

EUがエンジン車販売禁止の見直しに踏み切る背景には、想定以上にEV普及が進まない現状がある。欧州で販売されるEVの大半は3万ユーロ(約520万円)以上で、3万ユーロ以下のモデルはわずか16車種、
「全体の4%」
にとどまる。価格帯が高く、手が届く消費者が限られていることが普及の足かせとなっている。
充電インフラの整備も遅れが目立つ。北欧ではEV普及とインフラ整備が進む一方、東欧や南欧では充電ポイントが不足し、地域間で電気料金にも大きな差がある。
EU加盟27か国の間で普及度合いに濃淡があるなか、一律にエンジン車販売を禁止すれば、市場の崩壊を招きかねない。欧州経済全体に深刻な影響を及ぼすリスクがあり、一面的な規制は機能しないとの批判も強まっている。
その間隙を突く形で、BYDなどは低価格EVを相次ぎ投入し、欧州市場で攻勢を強めている。一部は現地生産の準備を進め、価格競争力をさらに高める方針だ。EUは中国製EVに追加関税を課しているが、効果は限定的にとどまる。欧州委員会内部でも
「価格引き下げと技術中立性」
への政策転換を求める声が高まっている。