「EV100%は非現実的」フォルクスワーゲンCEOが断言──EUエンジン車禁止見直し前倒しに、日本メーカーは活路開けるか
欧州自動車市場はEV販売が前年同期比24%減と失速し、BYDなど中国勢が攻勢を強める。IAA2025ではEUの2035年エンジン車禁止見直しと「Eカー構想」が浮上。雇用数百万人を抱える産業の命運を左右する決断が迫られている。
EV化巡る欧州メーカー間の分断鮮明

ブルームバーグによると、VWのオリバー・ブルーメCEOは
「2035年までにEV100%にするのは非現実的だ。現実的な見直しを強く主張する」
と記者団に語った。メルセデスベンツのオラ・カレニウスCEOも「今こそ政策立案において何が機能し、何が調整を要するかを見直すときだ。何もしないという選択肢は、あり得ないと確信している」と強調した。
一方で、ボルボのハカン・サミュエルソンCEOはEUの措置に賛同を示した。ボルボは2030年までの完全EV化を撤回し、プラグインハイブリッド車とEVの販売比率を90%以上に修正した。2025年1~8月のEV販売は前年から24%減少し、苦戦が続いている。EVシフトを進めるメーカーにとって、EUの措置は販売を後押しする要因となる。欧州メーカー間で足並みの乱れが表面化した格好だ。
ドイツのメルツ首相も自動車産業の重要性を強調する。9月9日にIAA2025会場で演説し
「われわれはもちろん、EVへの移行に取り組んでいる。しかし、規制にはより柔軟性が必要だ」
と訴えた。自動車産業は数百万人の雇用を支え、欧州経済の中核を担う。広範なサプライチェーンを抱えるだけに、EUの措置は産業全体に劇的な影響を及ぼしかねない。
仮に措置が撤回や延期となれば、気候変動対策への信頼は揺らぐ。EV普及でも中国に遅れをとるリスクが一段と高まる。欧州は理想と現実の狭間で、苦しい選択を迫られている。