ワンマン列車の運賃支払い 「PayPay対応」がメリットしかないワケ
JR東海は2025年8~10月、飯田線の無人駅区間でPayPayを使う運賃収受実証を開始した。12.5兆円超の取扱高を誇る国内最大コード決済を活用し、運転士の負担を軽減しつつ訪日客にも対応。高額紙幣の概算収受を避け、地方鉄道の省力化と観光振興を同時に狙う試みだ。
JR東海、ワンマン列車にQR決済導入

2025年8月1日から10月31日まで、JR東海は飯田線の川路~宮木間でワンマン列車の運賃収受を効率化する実証実験を行っている。PayPayのユーザースキャン方式を採用し、車内でQRコード決済を使う仕組みを導入した。利用者の利便性を高めると同時に、乗務員の負担や列車運行への影響を検証する狙いだ。
対象区間は無人駅が多く、現在は乗車時に整理券を取り、下車時に車内で運賃を支払う方式だ。ワンマンバスと同じ流れで、運転士がすべてを対応している。
PayPay決済の手順は、まず運転士に利用を申し出る。運転士が提示するQRコードをアプリで読み取り、運賃表示器の金額を入力して画面を提示し、支払いを確定する。最後に乗車整理券を運賃箱に入れて下車する。
一見すると現金支払いと手間は大きく変わらないように見える。それでもJR東海が実証実験を行うのは、将来的なデジタル化と省力化の布石だからだ。無人駅が多い地方路線では、現金精算や釣り銭管理の負担が乗務員に集中している。決済を電子化すれば、運賃計算や収支管理の自動化が進み、遠隔監査や業務効率化にもつながる可能性がある。地域交通の持続性を高める手段として、検証する価値はあるだろう。