なぜ「自動車水没」は繰り返されるのか? 九州豪雨で5000件超の救援要請、河川から離れた街でも起きる“都市型水害”の盲点とは
近年、台風やゲリラ豪雨などによる都市型水害が増加している。日本では地震や火災への備えが意識されやすい一方で、クルマの浸水や水没被害は軽視されがちで、毎年数千件規模の事故が発生している。
九州豪雨が突きつけた車両水没リスク

2025年8月8日から11日にかけて、九州地方を中心に豪雨が発生した。熊本県では床上浸水が相次ぎ、腰まで水が達する被害も報告された。菊池市では1時間あたり115.5mmの最大雨量を記録した。
川沿いの道路や立体駐車場の地下、低地の道路では、
「自動車の水没被害」
が続出した。冠水した道路を走行中の車両も多く、長洲町ではアンダーパス(鉄道や道路の下を通すために掘り下げられた道路)内で車が故障する事例も起きている。浸水車両は外観に問題がなくても、始動時に
・感電事故
・電気系統の不具合による火災
が発生する恐れがある。特に高電圧バッテリーを搭載する電気自動車(EV)はリスクが高い。
しかし、レッカー車の手配が遅れ、1週間以上にわたり多くの車が道路に放置された。JAF熊本支部によれば、8月11日から21日までの自動車水没に関する救援要請は5277件に達した。さらに、自然災害の多発で車両保険料が数年前から倍増しており、加入率は25%程度にとどまっている。
産業への影響も大きい。商工業や観光業、交通分野の被害額は270億円超、農林水産業関連は280億円超と見込まれている。熊本県は迅速な復旧を目的に、議会を経ず知事専決で85億円の補正予算を編成。そのうち53億1500万円を被災者救済や生活支援に充てる方針を示した。