なぜ「マイナ救急」は進まないのか? 出動件数急増でも保険証利用率28%、実施は2割にとどまる現実
救急隊員の負担増が深刻化する中、全国720消防本部で2025年10月から本格導入されるマイナ救急。1万件超の医療情報閲覧で応急処置や搬送先選定の迅速化が期待されるが、携帯率28.7%と課題も残る。
救急医療の情報革新

国はマイナンバーカードを活用した救急業務「マイナ救急」の全国展開を進めている。
マイナンバーカードは個人を特定するICカードで、12桁の個人番号と紐付けられている。氏名、住所、生年月日、性別の基本情報に加え、
・写真や健康保険証としての機能
・住民票や税情報の電子申請へのアクセス
が可能である。行政手続きのオンライン化や医療情報管理、身分証明などに活用されるほか、近年は救急現場で医療情報にアクセスするマイナ救急としても運用されている。
マイナ救急では、救急隊員が患者のマイナ保険証を専用タブレットで読み取り、医療情報を確認できる。これにより搬送先病院の選定や救急車内での応急処置が円滑に進み、搬送先での治療準備も事前に整えられる。
すでに各自治体で実証実験が行われ、多くの成果が報告されている。政府は全国720消防本部で2025年10月1日から運用を一斉開始する方針を決定した。2024年度の検証では、67消防本部・660隊が約2か月間に1万1398件の医療情報を閲覧した。意識障害やお薬手帳(患者が服用中の薬の情報を記録・管理するための手帳)不携帯の患者でも、円滑に搬送先選定と応急処置が行えた事例が多い。一方で、
・VPN接続やカード読み取りに時間がかかる
・患者の同意や本人確認など手続きが多い
課題も指摘された。今後は救急隊と患者双方のニーズを考慮した、多角的な改善策が求められる。