ホンダ・日産「ソフト共通化」が直面する三つの壁――SDV時代に問われる“自社OS”の存在意義とは何か?
自動車業界はSDVへの大転換期にある。ホンダと日産は、2020年代後半に向けて次世代車両のソフトウェア基盤を共通化する計画を進めている。だが、独自OSの開発や投資負担の違い、設計思想の非対称性が統合を難航させている。両社は収益性改善と開発効率化の両立を模索しつつ、設計自由度と長期的柔軟性のバランスをどう取るかが経営課題となっている。
SDV時代の主導権争い

自動車業界はいま、大規模な構造転換の真っただなかにある。ソフトウェア定義車両(SDV)の登場により、車両開発はハード主体から「ソフト主導」へと移行した。ユーザー体験(UX)、先進運転支援(ADAS)、自動運転、車載エンタメなども、メカニカルな差別化ではなく、ソフトウェア戦略の優劣が競争力を左右する時代となっている。
テスラの登場以降、
「全面ディスプレイ + ミニマル内装」
が次世代高級車の象徴となった。その体験価値を支えるのが、UI/UX設計と車載OSである。質感やアニメーションにブランドの世界観を反映させるには、自社主導のOSが欠かせない。
UI/UXはユーザー体験の中心にあり、今後の差別化の起点となる。Google Automotive OSのような共通プラットフォームでも一定のカスタマイズは可能だが、ブランドの思想をUI/UXに反映し、購買動機へつなげるには、全体を自社で制御できる体制が望ましい。
独自OSでなければならないわけではない。ただし、設計の自由度や開発の主導権を確保するうえでは、一定の独自性が必要となる局面は今後増えていくだろう。