ホンダ・日産「ソフト共通化」が直面する三つの壁――SDV時代に問われる“自社OS”の存在意義とは何か?

キーワード :
, , ,
自動車業界はSDVへの大転換期にある。ホンダと日産は、2020年代後半に向けて次世代車両のソフトウェア基盤を共通化する計画を進めている。だが、独自OSの開発や投資負担の違い、設計思想の非対称性が統合を難航させている。両社は収益性改善と開発効率化の両立を模索しつつ、設計自由度と長期的柔軟性のバランスをどう取るかが経営課題となっている。

SDV時代の勢力分布図

テスラのインテリア(画像:テスラ)
テスラのインテリア(画像:テスラ)

 SDVの時代に入り、自動車メーカーは

・情報系(UX)
・制御系(ADASや走行制御)

を切り分けつつ、自社の強みに応じた戦略の分岐を加速させている。

 欧州勢は内製志向を強めている。メルセデス・ベンツはMB.OS、BMWはBMW.OS9を開発し、自社OSによる制御を軸とする。高単価な車両での差別化が直接的に収益へとつながるため、研究開発への投資も高水準だ。2024年の開示によれば、メルセデスの研究開発費は97億ユーロで売上比6.7%。BMWは91億ユーロで6.4%に達する。EVや車載ソフトへの投資が一段と加速している。

 北米勢も戦略を転換しつつある。GMやフォードは当初Google OSを積極的に採用していたが、現在のGMはApple CarPlayやGoogle Mapsの排除を進めている。自社OS「ultifi」を軸に、独自領域の構築を狙う。今後、自社OS搭載のEVを市場投入する方針だ。

 中国勢は国産OSによる囲い込みを進めている。比亜迪(BYD)や吉利汽車は、UXとADASの両方を自社OSで制御し、車両データの主導権を自社に取り込む。サブスクリプション課金よりも、車両単価の引き上げで収益を確保する戦略が際立っている。

 トヨタはスケールを活かしたハイブリッド型の構えを取る。自社開発の「Arene OS」で制御系を内製化する一方、UXは市場や車種ごとにGoogle OSなど外部OSと使い分けている。2025年3月期の研究開発費は1.3兆円で、売上比では2.8%に抑制されている。巨額投資を最小限に抑えつつ、規模の優位性を最大化するバランス型の戦略といえる。

全てのコメントを見る