ホンダ・日産「ソフト共通化」が直面する三つの壁――SDV時代に問われる“自社OS”の存在意義とは何か?

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自動車業界はSDVへの大転換期にある。ホンダと日産は、2020年代後半に向けて次世代車両のソフトウェア基盤を共通化する計画を進めている。だが、独自OSの開発や投資負担の違い、設計思想の非対称性が統合を難航させている。両社は収益性改善と開発効率化の両立を模索しつつ、設計自由度と長期的柔軟性のバランスをどう取るかが経営課題となっている。

車載ソフトの共通基盤

日産自動車のロゴマーク(画像:時事)
日産自動車のロゴマーク(画像:時事)

 2025年7月、ホンダと日産が次世代車両のソフトウェア基盤を共通化するとの報道が再び出た。両社は2020年代後半をめどに、共同開発したソフトを自社車両に搭載する計画を立てている。

 この動きは、2月に破談となった経営統合協議の延長線上にある。単なる合理化ではなく、両社が抱える

・投資資源の限界
・事業ポジションの見直し

を象徴している。ホンダと日産はいずれも、アキュラやインフィニティといったプレミアムブランドを擁する。ただし、BMWなど欧州勢ほどの販売単価には届かない。一方でマス市場でもトヨタほどの台数を持たず、結果としてスケールメリットを十分に活かしきれていない。

 販売構成が多極的であることも、地域特化型の戦略を難しくしている。特にホンダは、電気自動車(EV)シフトの影響で四輪事業の収益が圧迫されている。北米ではGoogle OSを採用しつつ、自社開発の「ASIMO OS」も進めており、ソフト戦略は分岐状態にある。

 こうした状況下での共通化には、開発コストの削減や効率化といった一定の合理性がある。ただし、両社の立場は大きく異なる。

 ホンダは幅広い製品群を抱えるがゆえに、開発負荷が高い。今後はリソースをどこに集中させるかが問われる。一方で、日産は業績回復の途上にあり、まずは収益性の改善が急務となっている。今回の共通化は、その基盤整備の一環といえる。SDV時代において重要なのは、

「何を捨て、どこに存在感を出すか」

である。中途半端な内製や、分散投資の継続はむしろ収益を蝕むリスクになりかねない。

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