100年に一度の再開発はなぜ頓挫するのか? 新宿・渋谷・中野で続々延期――迫りくる“都市型廃墟”の危機とは

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大型再開発が都市の景色を塗り替える一方で、施工遅延や白紙撤回が相次ぐ。背景にあるのは、建築資材価格の3年で30%超の高騰、人手不足の深刻化だ。都心だけでなく地方都市でも駅前整備が行き詰まり、都市間競争の勝ち筋は揺らいでいる。画一的な成長モデルの限界が、いま、あらわになろうとしている。

古建築活用の再評価

古い建物(画像:写真AC)
古い建物(画像:写真AC)

 大規模な駅前開発の陰で、古くからある裏路地や古い建物が姿を消しつつある。歴史的価値が認められなければ保存の対象にはならず、取り壊されるのが常だ。

 だが、こうした古い建物には地域の人々にとって親しみのある空間や、その土地ならではの雰囲気を持つ個性的な場所も多い。

・老朽化
・防災上の課題
・後継者不在

など、取り壊しには一定の合理性があるにせよ、保存と活用に取り組んでいる例もある。

 実際、旧建築をリノベーションして店舗として再生し、若者の集客に成功している地域もある。そうした試みは、緩やかな景観変化をもたらしつつ、新たな都市の魅力を育てている。

 かつて駅前開発は、都市間競争を左右するゲームチェンジャーだった。施設の充実は生活利便性を高め、若いファミリー層を呼び込む効果もあった。しかし今、消費スタイルやライフスタイルは大きく変化している。

 建築資材の高騰や建設人材の不足は今後も続く見通しだ。駅前の同質化が進めば、インバウンドを含めた外部からの流入にも限界が出るだろう。国内経済の先行き不安も重なり、大型開発のリスクはむしろ拡大している。

 だからこそ、今ある資源を活かし、緩やかな変化でまちを育てていくという選択肢も、改めて検討すべき時期に来ている。

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