コンパクトカーなのに「全然コンパクトじゃない問題」 定義が崩壊? 3ナンバー車も名乗る現状を考える
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「コンパクトカー=小さい」はもはや通用しない。全長4.3メートル超の“3ナンバー・コンパクト”が市場を席巻する中、ヤリス16万台超など販売上位は依然「コンパクト」勢。便利さとブランド戦略の間で揺れる言葉の実態に迫る。
コンパクト表現の落とし穴

日本の道路事情を考えると、狭い路地や住宅密集地が多いことが特徴である。車幅や取り回しのしやすさ、すれ違い時の余裕といった要素は、多くのユーザーにとって日常的な課題となっている。こうした課題を回避する選択肢として軽自動車が挙げられるが、軽では積載性や走行性能が物足りないという声も根強い。
コンパクトカーは、こうしたニーズを満たす存在として日本市場で高い人気を誇る。しかしながら、現在コンパクトと位置付けられた車のなかには、実際には取り回しに神経を使うサイズのモデルも少なくない。先述のとおり、3ナンバーサイズのモデルであってもマーケティング上はコンパクトとして扱われている。その結果、コンパクトだから小さいだろうというラベル由来の期待と、実際のサイズ感の間に大きな齟齬が生まれている。
車の購入検討時には、諸元表で全長・全幅・車高、最小回転半径などの数値が明示されている。メーカー側はスペックは明記していると説明責任を果たしているつもりであろう。しかしユーザーにとって、それらの数値が自宅の駐車スペースや近所の狭い路地での運転感覚とどう結びつくかを正確に想像するのは難しい。数値を理解していても、コンパクトという言葉から受ける心理的な補正が先行し、
「自分にちょうどいい」
と思い込んでしまうケースが散見される。
特に近年は、サブスクリプション型の契約やオンライン販売の普及により、試乗せずに車を選ぶユーザーが増加している。実車を見たり運転したりせず、コンパクトという言葉とスペック表の数字だけで判断する構造が定着しつつある。こうした状況下で、名称と実体のズレは以前にも増して深刻なミスマッチの原因となっている。