全固体電池で挑む日本の逆襲――なぜリチウムイオン電池大国・日本は「中国依存8割」の現実に陥ったのか?
中国が8割のシェアを握る車載電池市場で、日本勢が巻き返しを狙う。全固体電池の特許出願で世界をリードするトヨタと出光は、2027年の実用化を見据え量産体制を本格化。パナソニックも米IRA追い風に6000億円を投資。巨大市場の覇権争いが新たな局面を迎えている。
米IRA追い風の巨額投資

米国では思わぬ追い風が吹いている。パナソニックは米国のIRA法によって、2023年度に純利益ベースで1118億円の優遇を受けた。現在、カンザス州に約6000億円を投じて新工場を建設中だ。
当初は次世代電池「4680」の生産を想定していたが、まずは従来型の「2170」からスタートする。理由は単純で、従来型の需要が逼迫しているためだ。
生産現場では試行錯誤が続く。ネバダ工場では生産の安定化に数年を要したが、カンザス工場ではその経験を活かし、安定稼働までの期間を大幅に短縮する計画だ。
競合の動向も注目に値する。量産力で中国勢が先行する一方、日本勢は安全性と高品質で差別化を狙う。パナソニックの渡辺CTO(最高技術責任者)は「中国製との価格競争には巻き込まれない」と語る。あくまで技術力で勝負する姿勢を明確にしている。
2030年には車載電池市場が6080GWh規模へと拡大する見通しだ。現在の約8倍に相当する巨大市場である。日本の2030年目標である150GWhも、現状の投資ペースが維持されれば前倒し達成の可能性が出てきた。
なかでも注目されるのが全固体電池だ。実用化されれば、10分の急速充電で1200kmの走行が可能になる。これはEVの常識を塗り替える革新となりうる。
特許出願数では日本勢が優位に立っており、技術面での主導権を握る展開も見込まれる。中国依存の構造も全固体電池によって変わる可能性がある。液体の電解質やセパレーターを使わず、新しい材料設計が求められるためだ。
現時点で部材では中国が8割のシェアを握っているが、次世代技術で主導権が移る可能性がある。EVに全固体電池が搭載され、公道を走る日も遠くない。