駅ビルはいつから「おしゃれ」になったのか?――若者文化と高級ブランドが導いた商業空間の変貌
駅ビルが“ただの通過点”だった時代は終わった──。1989年の国分寺エル開業を皮切りに、JRは商業施設の直営化とデザイン刷新を本格化。吹き抜け空間や高級ブランドを導入し、駅周辺の人流・文化・消費行動を大きく変えていった。その進化の起点と経済的インパクトを辿る。
駅直結2万平米の先駆け施設

東京の主要ターミナル駅では、駅ビル内の商業施設が年々充実してきた。グルメからファッションまで、時代のニーズに応じたテナントが集まり、駅の外に出る必要すら感じさせない利便性を実現している。こうした駅ビルの“洗練”が本格化したのは、国鉄が分割民営化された1980年代後半からだ。その先駆けとなったのが、東京都国分寺市にある国分寺駅ビル「国分寺エル」(現・セレオ国分寺)である。
開業は1989(平成元)年3月1日。JR東日本などが出資し、地下2階・地上9階の商業施設としてスタートした。売り場面積はおよそ2万平方メートル。オープン当初は、丸井国分寺店を中核テナントに、69の専門店と17の飲食店が入居していた。