JR東日本はなぜ「夜行特急」を復活させるのか? 全室個室で青森12時間運行――「常設化」への試金石となるか?

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JR東日本は2027年春、改造E657系による全室個室の夜行特急を開始する。テレワーク対応やシニア向けプレミアム車を備え、宿泊費高騰や多様化する移動ニーズに対応。限定運行から常設化を目指すテストマーケティングで、「移動+休息」の質向上を狙う。鉄道の快適性で差別化し、採算性やビジネス展開を検証する試金石となるか。

宿泊費高騰が追い風

新たな夜行特急列車のイメージ(画像:JR東日本)
新たな夜行特急列車のイメージ(画像:JR東日本)

 かつて日本には、電車特急ベースの寝台列車が存在した。代表例が国鉄の581系や583系である。これらは京都鉄道博物館などで現在も展示されており、広く知られている。

 サンライズ以前の夜行特急車両は、客車列車とは異なる電車特急型で構成されていた。最大の利点は運行コストの圧縮だ。自走式車両であるため、ダイヤ設定の柔軟性が高く、高速化も可能。さらに、機関車の解結が不要で、定時性の確保にも寄与する。今回のJR東日本による新夜行列車もこの系譜に属し、電車ならではの機動性と信頼性が期待されている。

 一方、夜行移動という視点では高速バス業界の動きも注目に値する。例えば高知駅前観光は、東京~高知間の夜行バスに完全フルフラットシート「ソメイユ・プロフォン」を導入し、注目を集めた。

 夜行バスの需要は、新型コロナの収束と景気後退に伴う移動効率の重視から回復傾向にある。WILLER EXPRESSが2024年に実施した利用者アンケートによると、「過去1年で宿泊料金が高騰した」と答えた人は全体の85%。そのうち62.9%が「宿泊料金の高騰を理由に夜行バスを選んだ」と回答している。この調査結果は、宿泊費の上昇が夜行バス利用を後押ししていることを明確に示している。

 さらに、寝台バスという新たな車両も登場し、夜行移動の選択肢が広がっている。ただし、顧客ニーズは一様ではない。現地到着後すぐに行動したい層と移動中に仕事と休息を両立させたい層とで、需要は二極化しつつある。

 後者のニーズに最も適しているのは鉄道である。ホテル料金の高騰に悩むのは主に出張族であり、移動時間を業務や休息に転用できる点で、鉄道の優位性は明確だ。夜行列車には、時間の有効活用という観点でも大きな可能性がある。

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