「タワマン新住民」と旧住民は共存できるのか? 「快適さ」が街の歴史を破壊する根本理由 識者が警鐘を鳴らす“クソ社会化”のリアルとは
SNSで話題となった「うなぎ店クレーム騒動」は、東京の再開発地域で進む“新住民化”の象徴だ。生活文化と快適性が衝突する都市の摩擦は、今や全国で可視化されつつある。求められるのは、制度としての「共生の設計図」――全国に8,000棟を超える高層集合住宅時代の新たな課題だ。
においひとつが揺さぶる生活文化の継承

高層マンションが立ち並ぶ湾岸地区や再開発された街には、古くからの住民たちが築いてきた商店街や町内会のつながりが今も残っている。しかし、その接点では、静かに摩擦が広がりつつある。2025年3月にSNS上で話題となった「うなぎ店クレーム騒動」は、その対立の一例にすぎない。
この騒動は、ある老舗のうなぎ店の隣に、近年建てられたマンションの住民が苦情を出したことから始まった。うなぎを焼くときの煙やにおいが不快で、生活に支障があるという理由である。これに対し、とある飲食店の関係者が「最初からその場所に住まなければよい」とSNSに投稿したことで、瞬く間に多くの反応が集まり、議論は全国に広がった。
別の投稿では、「べらぼうめい、江戸っ子は匂いで白飯三杯食えらあ」といった、地域文化への誇りを強調する言葉が使われた。多くの人が共感を示し、非難の矛先は老舗ではなく、あとから引っ越してきた住民に向けられた。
「あとから来て文句を言うのはおかしい」
「老舗には敬意を払うべきだ」
といった意見が相次いだ。この議論は、地域の文化をどう守るかという問題から、都市開発が引き起こす文化の衝突という、都市生活の根本的な課題へと広がっていった。