JAL・ANAは「LCC」を維持できるのか? 日本流「多ブランド戦略」の落とし穴、海外勢に勝てない根本理由とは

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日本の大手航空傘下のLCCは複数ブランドによる資源分散で競争力が低下。ピーチの84.4%に対しエアージャパンは69.3%と苦戦。JAL系3ブランドも座席利用率は軒並み7割超だが、労使問題や路線競合が影響。海外LCCの急拡大に対抗できず、両社は将来的にLCC統合を迫られる可能性が高い。今後の再編判断が注目される。

ブランド共食いの危機感」

飛行機(画像:写真AC)
飛行機(画像:写真AC)

 海外の事例を確認したところで、日本の大手2社の状況を見ていきたい。まずは、ピーチとエアージャパンの2社を傘下に持つANAの現状から整理する。2025年3月期の搭乗率は、

・ピーチ:84.4%
・エアージャパン:69.3%

だった。一般的に座席利用率の採算ラインは7~8割とされるため、ピーチは好調といえるが、エアージャパンはそれに届かず、苦戦しているのが現実である。

 エアージャパンは現在、成田からソウル・バンコク・シンガポールの3路線を運航しているが、いずれも競合が多く、明確な差別化ができていない。機材もボーイング787が2機のみで、新規路線の展開は難しい状況だ。ANAはエアージャパンについて

「引き続き成田=バンコク線、成田=仁川線、成田=シンガポール線を運航し、2025年度下期には3機目となる機材を導入することで、アジアを中心とした国際線の路線拡大に備えます。旺盛な訪日需要を取り込むことで収益の最大化に繋げてまいります」

としている。

 たしかに、アジア路線を広げる意欲はうかがえる。ただし、エアアジアをはじめとする巨大LCCが競合するアジア市場で存在感を発揮できるかは疑問だ。価格戦略や広告展開にも課題が残る。エアージャパンは最近、搭乗率向上のためと見られるセールを繰り返し実施しており、ANAの株主優待にもバンコク線・シンガポール線の割引特典を付与している。明らかな割引攻勢である。

 同時に、同社はシートピッチ32インチ(約81cm)を売りにしている。これはエアアジアなどのLCC(28~29インチ)や、ANA国内線(31インチ)よりも広い。快適性では優れるが、そのぶん座席数は少なくなる。そこに安売りを重ねると、収益が成り立ちにくくなる懸念がある。割引には宣伝の意図もあると考えられるが、大胆な値引きが難しい以上、株主優待制度のように日本在住者にしか適用されない施策は、訪日客をターゲットとする戦略と矛盾しているようにも見える。

 こうした状況を踏まえると、エアージャパンは訪日外国人ではなく、

「ANAブランドに親しんだ日本人」

に向けて、海外旅行を促す方向へ戦略を切り替えるべきではないかと思える。だが、現状の訪日需要中心の路線を変えないのであれば、LCCのなかに埋没し、今後さらに厳しい局面に直面する可能性がある。

 そして、決定的な転換点となりかねないのが、ピーチが導入を決めたエアバスA321XLRの存在である。この機材は単通路の小型機ながら、東京から東南アジア全域をカバーでき、インドやオーストラリアへの直行も可能な航続距離を持つ。こうなると、アジア路線に特化するエアージャパンの存在意義そのものが問われかねない。

 エアバスA321XLRの導入は2030年以降の予定である。一方で、エアージャパンのボーイング787はANAの初期導入機材を転用しており、そのころには経年劣化が進んでいるとみられる。LCCブランドの再編や統合は、そのタイミングで現実のものとなっているかもしれない。

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